山形県東根市の老舗企業「有限会社あぶらや」は常識で測れない企業だ。主な事業は、化粧品専門店「私のスタイルハウスMORI」、女性だけの30分フィットネス「カーブスMORI(東根市と新庄市に各1店)」の二つ。いずれも集客が要のビジネスだが、新型コロナの逆風をものともせず、「あぶらや」の業績は毎年、過去最高値を更新している。本店の東根店は、化粧品専門店とカーブスの併設型で、約40台分の駐車場がある典型的な地方の路面店である。創業は1914(大正3)年までさかのぼる。東根市内で婦人髪油・くし・かんざし・煙管などを行商していた創業者は、28(昭和3)年に化粧品小間物商「油屋」を開店した。戦後の46(昭和21)年に二代目が紳士服・婦人服・子ども服・呉服・カバンなどの販売をスタート。そして60(昭和35)年に資生堂とチェインストア契約を結び、今に続く「有限会社あぶらや」が誕生したのである。現在、経営を切り盛りするのは、4代目の森里史氏。社長に就いたのは2015(平成27)年だが、26歳の時から経営を担ってきた。「地域で不可欠な存在になった専門店は生き残る」と語る森社長に成長の秘訣を聞いた。

あぶらやの森里史社長

お客もスタッフも楽しい店づくり

――あぶらやの成長戦略は、どのようなものでしょうか。

東根市の人口は4万7974人(2022年12月末時点)。車で南に30分で山形市があり、東北最大の都市である仙台にも1時間弱で着く。新幹線に乗れば、東京に日帰りで遊びに行けます。近隣には大型商業施設も、ドラッグストアも無数にあり、競合は少なくない。このような市場環境で1000人、2000人と大勢の会員を獲得するのは難しいですから、私は20代の頃から来店回数をベースに客単価を引き上げるビジネスを徹底してきたんです。もともと主力事業はアパレルだったのですが、ファストファッションの台頭を目の当たりにし、化粧品事業を強化。150万円ぐらいだった化粧品の月商は、4倍になっています。来店回数と客単価を高めるために、あぶらやのスタッフが明るく元気に働き、フレンドリーで親しみやすい接客と雰囲気を生み出すことを大切にしてきました。店に足を運び、会話をすると、なんだか楽しくて元気になる。そんな地域とお客さまにとってパワースポットのような存在になろうと心がけてきたんです。

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