化粧の楽しみを伝え改めて需要を喚起
化粧品市場が長い低迷のトンネルから脱することになりそうだ。日本政府は5月23日、新型コロナ対策の指針「基本的対処方針」を改定し、屋内外でマスクを外せる状況を初めて明記した。さらに厚労省は6月22日、熱中症予防策として屋外での脱マスクを推奨(近距離での会話を除く)。これでマスク着用で需要減を招いたメイクアップは、ようやく反転攻勢に入る下地ができた。さらに日本市場の活性化に欠かせないインバウンド需要が戻る。日本政府は5月20日、新型コロナの水際対策を6月1日から緩和すると発表。1日当たりの入国者数の上限は約2万人と少ないが、人口減で市場縮小の日本にとって外国人の購買は喉から手が出るほど欲しいところだ。ローカル需要とインバウンド需要の両輪が揃えば、市場回復は力強くなる。だが、その恩恵を受けるのは、コロナ禍の逆風を言い訳にせず、ブランドの競争力を磨き続けた企業に限られそうだ。
コロナ下の生活が長引き、化粧へのニーズが著しく変化している。例えば、リモートワークの普及により、他人の目を気にする必要性が薄れ、自分らしさを表現する風潮が強くなっている。コロナ下で需要が伸びた目もと用メイクを見ると、日本人はこれまで黒かブラウンという無難な色を選びがちだったが、コロナ下ではオレンジやレッドなどのカラフルな色が売れ筋になり始めた。トレンドの変化をとらえ、積極果敢に価値提案したブランドはコロナ下でも伸びた。出社と在宅の使い分けが浸透し、就労時の服装も柔軟になったという。日本特有の同調圧力がなくなり始めたのは、ファッションの一部である化粧品にも影響を与え続ける。このニーズの変化への対応は、これからもブランド間の勝負の分かれ目になる。
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