在宅勤務には敵が多い。宿命の相手は娘だ。ねぇ遊びにいこっか、(ブロックの)お城が壊れたの。いくつかの役割はパパ専門らしい。ママにはぜったいに頼まず、こちらに話しかけてくる。嬉しいのだけれど、振り切るのは至難の業。ただ、対策は心得たからもう大丈夫だ。もう一つの難敵はネットフリックス。特にオリジナル作品は完成度が高く、米国で賞レースを席巻しているのも納得。思わずシリーズ物にハマると、抜け出すのが大変だが、これも対策がある。結局は作品のことを、あーだ、こーだ、と話したい。だから、妻と一緒に見ることが最優先で、仕事が終わり、娘を寝かせた後に試聴時間を絞り込める。そして、いよいよ最大級の敵が現れた。それは東京五輪。ちょっと休憩、というときにテレビをつけると、真剣に打ち込むアスリートの表情から目が離せなくなる。こんな競技もあるのか、と瞬く間にスポーツの世界に引き込まれる。これは、やばい。仕事が進まない、とテレビを消すのは、いつも苦渋の決断となる。これらの共通項は人だ。コロナ禍だからこそかもしれないが、人は人とのコミュニケーションに飢えている。やっぱり他の人がやっていることを知りたい、それを話したい。今月の百貨店特集、専門店への訪問、ECの取材。いずれも人が人に与える体験を追い求めていた。アフターコロナの消費爆発は歴史的なものになるかもしれない。

月刊『国際商業』2021年09月号掲載