ファンケルの2021年3月期の通期業績は、海外サプリメントが前年比約20%の伸長となったものの、国内のコロナ禍が響き、売上高は9.4%減の1149億900万円、営業利益は18.0%減の115億7600万円、経常利益が17.7%減の117億8400万円、親会社株主に帰属する当期純利益は19.7%減の80億1600万円と減収減益だった。

セグメント別では、化粧品事業は14.2%減の651億4000万円。ファンケル化粧品は、店舗販売から通信販売への積極的な誘導や、外部通販の強化により通信販売が10.1%増となったものの、コロナ禍の影響で店舗販売、卸販売ほか、海外が減収だったことにより、全体で16.5%減の496億3700万円だった、アテニア化粧品は通販、および中国向け越境ECが好調な海外が増収だったが、店舗販売の減収により2.7%減の123億3700万円だった。ボウシャも化粧品専門店、百貨店への販売が減少し、13.9%減の24億2100万円だった。

一方の栄養補助食品関連事業は6.4%減の411億9100万円。店舗販売から通販への誘導や定期販売、外部通販の強化などで通信販売が増収となったほか、中国向け越境ECの好調で海外が伸長したが、店舗販売、卸販売ほかの減少を補いきれなかった。ただ今期は、生活者の健康意識の高まりにより順調に推移する見通しだ。

21年3月期通期業績は、売上高5.1%減の1090億円と減収予想だが、利益では営業利益が3.7%増の120億円、経常利益が3.5%増の122億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1.0%増の81億円と増益を見通す。

21年3月期を最終年度とする第2期中期経営計画「実行2020」について、島田和幸社長は「18年度、19年度と順調に成長し、総仕上げとする矢先に新型コロナの感染が拡大で大きな影響を受けたが、キリンHDとの資本業務提携、生産体制の拡大、物流機能の強化により成長の基盤づくりができた」と評価。そのうえで、23年度を最終年度とする第3期中期経営計画「前進2023」を策定したことを明らかにした。

新中計では、24年3月期で売上高1200億円、営業利益150億円、営業利益率12.5%、ROIC11.0%、ROE12.5%の数値目標を掲げる。これにはインバウンド需要は織り込んでいない。

大方針として、①独自価値のある製品づくりと育成②ファンケルらしいOMOの推進③新しい事業の育成と開発④本格的なグローバル化の推進⑤キリングループとのシナジー創出⑥人材育成と人材活用⑦サステナブルな事業推進と永続的なSDGs貢献、の七つのチャレンジ項目を掲げる。なかでも②は、「最も肝となる」(島田社長)。通販・店舗の両方を使うお客がどちらか一歩を使うお客に比べ継続率で1.5倍、年間購入金額が3倍に達することから、体験価値が高いと分析。そこでITを活用して通販と店舗のそれぞれの強みを融合し、お客の体験価値最大化を図る。そのベースとなる店舗スタッフ、電話窓口スタッフといった「人」の育成により注力していく。

また、ITを活用しお客をより深く知り、一人一人により最適なアプローチを実現する。具体的には18年に構築した基幹システムFIT2をより進化させたFIT3を22年春の稼働を目指し構築に着手。購買行動に加え、購買に至るまでの行動情報、ファンケルからのアプローチに対する反応、どういった情報を提供したお客がロイヤルカスタマー化したかなど、お客を理解するためのデータを収集し、分析できるシステムへと刷新する。

事業別では、化粧品事業では基幹の無添加スキンケア、無添加メイク、クレンジング、洗顔などを「The FANCL」と位置づけ、その価値を引き続き積極的に情報発信することに加え、ビューティーブーケ、AND MIRAIからなる「Neo」のほか、ブランドの多角化として「Prestige」として高級ラインの新ブランドを投入する。

一方の健康食品事業では、「既存サプリの強化」「パーソナル対応」「食品剤型の展開によるトライアル機会の創出」といった三つの戦略に加え、少子高齢化社会とコロナにおけるニーズの対応に注力し、高収益のビジネスモデルを目指していく。

「社長に就任して5年。これまではどちらかというと会社をよくしたい、弱いところを強くしたいと考えていたが、現在は未来をよくするために、人の配置、投資など様々なことを未来起点で考えていく。これからも愛され続ける会社であるために10年先を見据えて行動する」(島田社長)