心くすぐる“かわいい”を贈るギフト需要がコロナ禍でも好調

花言葉、ゲームコラボ、星座石。「すべては女の子の“かわいい”のために」をブランドポリシーに掲げるジルスチュアート ビューティのリップ施策が話題だ。2020年8月、ブランド誕生15周年を迎えた。その節目を飾ったのは、スターアイテムである「リップブロッサム」が「ルージュ リップブロッサム」としてリニューアル発売。全30色とカラーバリエーションを増やし、スワロフスキーをあしらったシルバーのパッケージに、先端で花びらのモチーフが輝くデザインへと一新。ジュエリーカットされたリップもあいまって、まるで一つの宝石のようなリップに生まれ変わった。

このリップを中心商材としたキャンペーンでは、初日から都心はもちろん、地方の百貨店にも長蛇の列が生まれた。銀座三越は、平日の昼間という閑散としている時間帯にもかかわらず、整理券の配布に列整備の専門スタッフが走り回るほどお客が殺到。さらに横浜高島屋では、新型コロナ対策に気を配りつつ、お客が1階から7階まで列を成したという。Twitter上では、「開店15分だけど既にめっちゃ並んでる」「あの色もう売り切れてたから後日取り寄せになった」などの情報が溢れ、人気色の完売店舗が続出。百貨店だけでなく、ジルスチュアート ビューティを取り扱う化粧品専門店にもその波及効果があったとのことだから、想定を超える成果を生んだのは明らかだ。キャンペーン初日に店舗に駆けつけた荒川菜摘氏は、次のように振り返る。

「並んでいる新規のお客さまの雰囲気を見ていると、本当にいつものジルのお客さまと同じだと感じました。店頭でリップだけじゃなくアイメイクなどの他のアイテムもキラキラとした目で楽しそうにみているお客さまの様子に、スタッフとしても力が入りましたし、楽しんで接客が出来たと思います」

今回のジルスチュアート ビューティの施策は異例の取り組みだろう。マスクが当たり前となった新たな生活様式の中で、メイク離れ、特にマスクで隠れるリップ離れの傾向は著しい。リップ以外のメイクはもちろん、ボディケアなども取りそろえるジルスチュアート ビューティの魅力を伝える手段は、他にもたくさんある。アイコンリップのリニューアル発売には、多くの葛藤があったに違いないが、それでもリップを選んだのには明確な理由がある。プロモーションを担当した荒川氏は「リップは、外見を美しくするという力強さを持っています。少し色を変えるだけでも、その人の雰囲気や印象をがらりと変える力があって、それは他でもないリップだからこその力だと実感していました」と語る。コロナ対策のマスク着用によって自己表現に悩むシーンが増加。以前よりもメイクに自己表現を求める傾向が強くなっているからこそ、ジルスチュアート ビューティはリップの持つ力を信じ、ブランド価値の向上を託したのだろう。荒川氏は、二つ目の理由について、次のようにいう。

「もう一つは、リップを通して内面の美しさを提供できると考えたからです。特に『リップブロッサム』は、『持っているだけでテンションが上がる』、『乙女心をくすぐる』と、愛用者さまから多くの声をいただいていました。メイクで彩るだけでなく、持つことでワクワクする、幸せな気持ちになれるという内面の美しさを提供できるのは、ジルスチュアート ビューティならではの魅力だと思ったので、こうした状況の中ではありますが、『ルージュ リップブロッサム』としてリニューアル発売を決めたのです」

リニューアルしたルージュ リップブロッサム

こうした女性の心をくすぐる絶妙なかわいらしさは、ギフト需要も引き出している。というのも、新型コロナの蔓延により人と会う機会が極端に減った4月以降、ジルスチュアート ビューティで特に売り上げが伸びたのはギフトボックス。ようやく会えた友人や恋人など、大切な人に何かプレゼントをしたい。なかなか会えないけれどギフトを送りたい。そう思ったときに、かわいらしく、プレゼントとしてちょうどよい価格帯のジルスチュアート ビューティのアイテムはぴったりで、ギフトは昨年を上回る売れ行きが続いている。

花言葉リップキャンペーンは、たくさんのブランドファンの投稿で賑わい、大成功

リップリニューアル発売と同時に開始した「#花言葉リップキャンペーン」でも、人々が持つ他者への思いやりに寄り添うブランドの意思が明らかになった。ルージュ リップブロッサムは、色名に花の名前が多く使われており、この色名に合わせた花言葉を添えて、大切な人にメッセージを送るというInstagramのキャンペーンを行ったところ、多くのハッシュタグ投稿で賑わった。SNS施策が盛り上がるのは、“メイクで色を付けるだけではない”という、幅広い意味での“かわいい”を追求するブランドコンセプトがファンに愛されているからこそだろう。

改めてオフラインの重要さを実感

スタッフの笑顔にもつながった異種コラボキャンペーン

 

ジルスチュアート ビューティの認知度は、20~30代女性の間で約80%とかなりの高水準だ。よって、現在はブラント認知拡大よりも、使用者を増やす商品開発やプロモーション施策に力を入れている。その一つが、人気スマホゲーム「A3!」とのコラボ。9月11日から、リニューアルしたルージュ リップブロッサムとゲームのキャラクターをそれぞれ掛け合わせ、購入金額に合わせて特典のポストカードや缶バッジを配布するというコラボキャンペーンを店舗とECで実施した。

昨今の化粧品業界においては、実はこうしたアニメやゲームといった異種ジャンルとのコラボレーション自体は珍しくない。しかし、ジルスチュアート ビューティのようにしっかりとしたコンセプトを持つブランドが、人気ゲームとコラボすることは新たなチャレンジである。

細かなこだわりも感じられる企画、そしてなにより、かわいらしいジュエリーのようなキラキラとしたリップに心動かされた全国のファンがプロモーション開始を心待ちにしたからこそ、長蛇の列が全国の百貨店で生まれた。

想定外の効果は、店頭スタッフのモチベーションが著しく高まったことだ。

コロナ禍は、客足が遠のき、わずかな来店客にもタッチアップの提供が難しく、販売の専門職は苦しい時間を過ごした。だからこそ、このコラボレーションで生まれた久しぶりの活況は、大きな喜びだったに違いない。それがお客に伝わり、店舗を訪れたお客も「初めてのデパコスで緊張してたけど、美容部員のお姉さんがすごく優しかった」「スタッフさんがゲームのことも勉強してくれていてびっくりした、嬉しい」とSNSは賞賛の声で溢れた。

ジルとの親和性、モチベーションの高い接客の掛け合わせが生んだ購買体験は、その後の業績にも好影響を与えている。例えば、このキャンペーンに参加したお客の約8~9割が新規客で、ブランドの顧客層が拡大。さらに初来店から1カ月後までの再来店率は、通常に比べて2ポイントほど高く、荒川氏は「SNSで見たお客さまの声が数字にも表れていて嬉しい限りです」と手応えを得ている。

人気のクリスマスコフレの他、次なる注目アイテムはやはり「星座石」にフォーカスした新作リップ「ラッキージェム マイリップス」だろう。第一弾となる12月の山羊座から始まり、1月には水瓶座、と毎月一色ずつ発売する予定だ。ECでは11月20日から毎月発売アイテムを届ける定期便の予約販売を開始したが、1週間で定員数に達するほど、ファンの注目度は高い。それぞれ星座ごとに存在する星座石をイメージしたカラーとなっており、ギフト需要を取り込むと同時に、テーマ性のあるかわいらしさを好むジルスチュアート ビューティのファンの嗜好を反映した切り口にもなっている。

好調な滑り出しを見せる期待の”星座石リップ”

「世間的に見た一般的なかわいいではなく、ジルスチュアートの世界観が好きだと言ってくださる方にどういう“かわいい”を提供して、どうやってもっと好きになってもらえるか。それを常に考えて、今後も商品、プロモーションにつなげていきます」(荒川氏)。ブランド誕生15周年のその先へ。ジルスチュアート ビューティは、“かわいい”の象徴として輝き続ける。