マンダムは、肌上での製剤の残存性を高めるため、粉体で油を乳化する「ピッカリングエマルション技術」に着目し、研究を行ってきた。今回、親水性が高く光散乱効果を有する「雲母チタン」を使用して、さらっとした使用感と耐水性を併せ持ち、男性の肌色を明るくする(トーンアップ機能)製剤の開発を目指して、ピッカリングエマルション技術に着目。その結果、脂肪酸と特定のジカルボン酸ジエステルを油剤中に配合することで、雲母チタンによるピッカリングエマルションの形成に成功した。なお、2020年8月発売のミドル男性用メイク化粧品「ルシード 印象アップローション」には同技術が応用されている。

一般的なリキッドファンデーションなどのメイク化粧品は、使用性・効果性の観点から主に水成分と油成分、さらに肌色を明るくするためや色味を変えるために雲母チタンを始めとした粉体顔料が配合されている。そして、その剤型は油が基剤のもの(W/O 型)と水が基剤(O/W 型)のものに大別される。

従来、水と油を乳化するためには界面活性剤が用いられ、油が基剤のメイクアップ化粧品は、肌への塗布後は水を弾き、耐水性に優れるが、皮脂の分泌が多い男性には「ベタつき」「閉塞感」等の不快な使用感につながる。そこで、乳液のようなさらっとした使用感を好む男性には、水が基剤の剤型(O/W 型)が好ましいと考えられる。

しかし、O/W 型の場合は界面活性剤を用いた一般的な乳化では、塗布後に汗などの肌上の水分によって油が再乳化を起こし、肌色を明るくすることや色味を変えるといったトーンアップ機能を果たす粉体の耐水性に課題があった。

そこでマンダムでは、O/W 型でありながらもメイク粉体の耐水性を向上させる技術の一つとして、「ピッカリングエマルション技術」に着目。光散乱効果で肌を明るく見せることができる雲母チタンを用いて、O/W 型のピッカリングエマルションを形成させることで、耐水性と男性に適した使用感を併せ持つメイクアップ化粧品の開発ができるのではないかと考えたのだ。

雲母チタンは元来、表面が水に親和性が高い粉体であるため、ただ水と油を混ぜあわせるだけでは油側に吸着せず、水側に分散するだけで、ピッカリングエマルションは形成されない。そこで安定したピッカリングエマルションの形成のためには、雲母チタンと油の親和性を高める必要があると仮定。その親和性を高める油性成分をスクリーニングした結果、脂肪酸と特定のジカルボン酸ジエステルが有効であり、雲母チタンを用いたピッカリングエマルションの形成が可能になった。

また、雲母チタンを配合した次の 2 タイプの乳化処方を用いて、耐水性の検証を行った。①界面活性剤を用いた乳化(O/W 型)モデル処方②ピッカリングエマルション(O/W 型)モデル処方 (同量の雲母チタンと油剤を配合)――の二つのモデル処方を黒皮革に塗布した後、水をミスト噴霧し、その前後の写真及び色差(L 値:明るさ)を比較評価した結果、ピッカリングエマルション形成のモデル処方の方が界面活性剤を用いたモデル処方に比べ、塗布した雲母チタンの残量が多く、色差も維持されていることから、耐水性に優れていることが分かった。この結果から、トーンアップ機能が持続すると考えられる。