2019年7月1日、中国・上海で史上最も厳しいゴミ分別措置と言われる「上海市生活ごみ管理条例が施行された。ごみは、資源ごみ、有害ごみ、生ゴミ、燃えるごみの4種類に分けられ、分別をしない個人や企業に対する罰則もある。中国政府は、この条例を上海を皮切りに、全国的に広げるだろが、当然、中国の化粧品業界にも大きな影響を与える。それもあって、中国では、ローカルメーカー、外資メーカーを問わず、エコ活動が活発化している。

それをリードするのはロレアル。18年6月、アリババグループと「グリーンニューリテールプロジェクト設立趣意書」を締結した。ロレアルは、森林資源の破壊を減らすために、中国で自営するネットショップの宅配ダンボール箱は、すべてFSC(森林管理協議会)の認証紙を使用すること。そしてジッパー付きダンボール箱、紙製の粘着テープ、緩衝材を使うことで、ダンボール箱のリサイクルを100%にする、と約束した。

18年の独身の日(W11)、ロレアル中国の高級化粧品ブランドは率先して動き、合計200万個の「グリーン小包」を配達したというが、グリーンニューリテールは配送段階の二酸化炭素排出量の削減だけでなく、実店舗を利用する顧客のエコ意識の向上、その活動への参加を促すことも含まれている。例えば、18年、ロレアルは現地百貨店などに容器回収ボックスを設置し、店舗の会員顧客に対し容器1個当たり200ポイント(月100ポイントまで)した。キールズも同様の取り組みをスタート。ロレアルは、3年間で50万個のプレスチック製容器の回収を計画している。

また、ロレアル中国によると、現地の蘇州工場は、すでに二酸化炭素排出量ゼロを実現しているばかりか、生産過程でのエネルギーと水資源の使用量も減らしている。18年のロレアル中国の化粧品生産量は05年比376%増だったが、二酸化炭素排出量は58.7%も減少したという。蘇州工場設置は06年で、同社グループにとってアジア太平洋地域における最大の生産拠点だ。19年7月1日に就任したロレアル中国のファブリス・メガバーン氏は、「蘇州工場は、グリーンマネジメントを堅持する工場として、全世界にあるロレアル工場の先頭を歩んでいる」と説明する。

ロレアル蘇州工場は二酸化炭素排出量ゼロを実現した

環境対応に力を入れるのは、中国企業も同じだ。たとえば、ゲランやディオール、資生堂などが投入した詰め替え製品は好評を博しており、その影響を一部のローカルブランドに波及している。「藍月亮」の液体洗剤、「欧詩漫」のクッションファンデーションなどが、それだ。「藍月亮」の液体洗剤は、ネットスーパー「天猫超市」で月間販売量が10万個に達したという。

小売業の動きもある。たとえば、化粧品メーカーと協力し、容器の回収に注力するのが、武漢にある百貨店「武商広場」だ。同社は14年間にわたって、容器回収のエコ活動を行っている。19年2月27日~3月10日の活動では、昨年同期比5%増、4万個以上を回収したという。同社幹部は次のように言う。

「われわれの活動は消費者に強く支持されている。その理由は二つある。第一に、容器回収は環境意識の高まりという時代の流れに順応していることだ。たとえ、われわれが顧客に買い物券を贈呈しなくても、消費者がこの活動に協力してくれると信じている。もう一つは、容器を捨てることは、一部の不法商品に偽物をつくる機会を提供することを意味し、それは消費者も望んでいない。われわれは回収した容器を専門のリサイクル会社に渡し、資源の再利用に役立てている。14年間のエコ活動を通して、われわれは社会的責任を履行する企業イメージを生み出すとともに、来店客の増加と顧客ロイヤリティの向上を実現したということだ」

中国市場では、エコ包装資材の利用や過剰包装の抑制、さらに資源回収とリサイクルを含む環境経営を強く意識する企業が増える。今後は、プラスチックの削減、海洋プラスチックごみの流出防止を目指す動きが活発化しそうだ。(国際評論家・謝憲文)