ポーラ化成工業は、第36回IFSCC世界大会において、シミの新しい改善アプローチにつながる研究成果を発表した。

シミの主な原因は、紫外線の刺激により、細胞を守るメラニン色素が過剰に作られることにある。従来のシミケアは、メラニンを「作らせない」または「取り除く」ことが中心だった。しかし、シミが薄くなっても、ケアを止めると再びシミが現れることがあり、根本的な解決は難しいとされていた。一方、「日焼け」による黒化は、紫外線を防ぐことで自然と元に戻ることから、肌は本来、紫外線による色素沈着から回復する力を持つことが分かる。そこで同社では、長年多くの人のシミを観察する中で、シミが自然に薄くなるケースがあることに着目し、そのメカニズムを解明することで再発予防につながる知見を得ようと考えた。

同研究では、注射針よりも細い直径250マイクロメートル程度の針を用いて、皮膚からごく少量の細胞を採取することで同じシミ部分を継続的に調べられるマイクロバイオプシー技術を用いて追跡調査を行った(図2)。

その結果、シミの部位は、通常の肌に比べて紫外線などによる「DNAダメージ」を示す指標が慢性的に高いことが分かった(図3)。シミは、単に周囲より色が濃いだけでなく内部の細胞がダメージを抱えた状態にあると考えられる。

同研究では、シミがある人の肌を対象に、20週間にわたる追跡調査を実施。中には自然とシミが薄くなった人もいたが、意外なことにメラニンを作る遺伝子には変化が見られなかった(図4A)。

そこでシミが薄くなった肌にだけ見られた特徴を洗い出すと、ダメージを負ったDNAを修復する遺伝子が活性化していることが判明(図4B)。その中で中心的な役割を果たしていたのが「NEIL3」だ。このことから、シミの改善には、DNAダメージの修復力、NEIL3を起点としたメカニズムが重要であることが今回はじめて分かった。

メラニンには、紫外線によるダメージから細胞の核を守る働きがあり、細胞は自らを守るためにメラニンを積極的に取り込む性質を持っている。DNAダメージとメラニン取り込みは密接に関わると考えられる。しかしNEIL3が表皮細胞のDNA修復に関連するのか、またNEIL3の量がメラニンの取り込みに影響するかは調査できていなかった。

そこで、培養した細胞を用いて、NEIL3を減らす処理を行ったところ、紫外線を浴びた後のDNA修復が遅れ(図5)、それに伴って細胞がメラニンを取り込む量が増えることが確認された(図6)。反対に、DNA修復がしっかり進めば、細胞は自らを守るためにメラニンを取り込む必要がなくなると考えられる。

さらにNEIL3の働きを高める成分の探索を行い、ヒメフウロという植物の抽出物に、NEIL3の発現量を増加させ(図7)、細胞のメラニン取り込みを抑える効果があることを見いだした(図8)。この成分は肌の回復力を高め、シミの根本原因に働きかけることが期待される。

これらの結果から、肌がDNAダメージ修復モードに入ると、シミを作ろうとする活動が自発的に停止する可能性がはじめて明らかとなった(図1)。