資生堂は、「資生堂女性研究者サイエンスグラント」の第18回受賞者10名(総応募数108名)を選出し、2025年6月20日に資生堂グローバルイノベーションセンターにて授賞式を開催した。テーマは「女性研究者のネットワークの活用」。
同グラントは、「次世代の指導的役割を担う女性研究者を支援することは科学技術の発展につながる」という考えのもと、自然科学分野の幅広い研究テーマ(理工科学系・生命科学系全般)を対象に、07年度の設立以来、毎年最大10名の女性研究者へ研究助成を実施している。本グラントの特徴として、受賞者に贈られる各100万円の助成金は、出産・育児などのライフイベントと研究活動を両立するための環境整備(学会参加の際の託児費用や研究補助員の雇用など)にも柔軟に活用できることが挙げられる。また、同グラントを通じた受賞者同士の交流が、その後の研究活動やキャリア形成のサポートにもなっている。
日本のSTEM(Science,Technology,Engineering and Mathematics)領域におけるジェンダー・ギャップ解消への課題認識が高まる中、資生堂は女性活躍推進を積極的に推進する企業として、女性研究者の支援を通じた科学技術の発展による、サステナブルな社会の実現に貢献していく考えだ。
日本において研究者全体に占める女性の割合は18.5%で(総務省2024年〈令和6年〉科学技術研究調査結果)増加傾向にあるものの諸外国に比べ依然として低い水準だ。女性研究者の悩みとしては、仕事と家庭の両立に関するものが多く、その他「女性研究者が少なく立場が理解されにくい」「周囲に相談・情報交換できる人がいない」など、プライベートに限らず研究活動の場においても、活動環境が十分に整備されていない女性研究者も少なくない(資生堂アンケート。調査期間:2022/11/16~30、資生堂女性研究者サイエンスグラント受賞者のうち回答者数:74名〈送付者数:119名〉)。
資生堂はこうした状況を踏まえ、指導的立場を目指す意欲がある女性研究者を支援することを目的に、07年に「資生堂女性研究者サイエンスグラント」を設立し、活動を継続してきた。女性研究者がさらに活躍できる環境を整えていくことで、研究領域のダイバーシティを加速させ、日本の科学技術の発展への貢献を目指す。
式典当日は、受賞者が一人ずつ今後の抱負などについてコメント。「私の研究領域は世界的に見ても研究者が少ない領域であるが、今後私が指導的立場に立ち、この分野を盛り上げていきたい」「所属している大学でも女性研究者の割合が少ないことが課題となっているが、私自身が指導的立場を担えるよう、本グラントを励みに努力していきたい」など、一人一人が今後の目標に向けて、決意を新たにしていた。
資生堂 取締役 代表執行役 エグゼクティブオフィサー、チーフファイナンシャルオフィサー チーフDE&Iオフィサーの廣藤綾子氏は、「世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数によると、日本は148カ国中118位と、依然として大きな男女格差が残っています。社内研究機関『資生堂DE&Iラボ』の知見から、女性は男性に比べてジェンダー平等を意識している一方で、内面では『女性らしさ』に縛られやすく板挟みの状況にあることが示唆されました。また、多様なリーダーが活躍できる環境を作ることの重要性も同研究で示されています。私自身も、これまでの挑戦と学びから、『多様な声に耳を傾け、誰もがのびのびと力を発揮できる空気を作ること』を大切にしています。挑戦には勇気を要しますが、挑戦したからこそ見えてくる世界があります。不完全でも、飛び込んだ先にある景色が未来を変える力になると信じています。日本の女性研究者を取り巻く研究環境は依然として厳しいですが、自分らしいリーダーシップを発揮することで道を切り開いていただきたいと願っています」とコメントした。
資生堂 エグゼクティブオフィサー チーフテクノロジーオフィサー、審査委員長の東條洋介氏は、「今年の受賞式では、過去の受賞研究者から、助成期間終了後の研究の進捗とご自身の研究やステップアップの中で乗り越えてきた経験などを共有いただきました。本グラントを通じて多様なロールモデルと直接交流しアドバイスが得られる機会は、今後更なる活躍を目指す上で有意義だという受賞者のお声を頂きました。近年はジェンダードイノベーションという考え方も注目されていますが、化粧品領域では以前からジェンダーの違いに着目した研究アプローチを取っており、親和性が高い分野です。当社でも、女性、男性の研究員それぞれが、技術者であると同時に消費者でもあることを活かし、活躍しています。指導的立場に立つ女性の割合が未だ高い水準とは言えない大学・研究機関においてダイバーシティが広がることは、日本での科学の発展に欠かせない要素であると考えています。受賞者の更なるご成功とご発展をお祈りしています」とコメントした。
日本の女性研究者の厳しい研究環境が改善され、女性研究者が活躍していくためには、研究組織の意思決定の場に女性が増えることは重要だ。資生堂は今後も日本の科学技術の発展に貢献するため、「資生堂女性研究者サイエンスグラント」を通じて、指導的役割を担う女性研究者の育成を支援していく。