例年通り1月末に行われたLVMHの決算報告は、耳をつんざくようなF1レーシングカーのエンジン音で始まった。昨年秋、F1との10年間スポンサーシップ契約を発表したばかりだからだ。ここ十数年は、LVMHのようなラグジュアリー大手であっても、「持続可能な発展」や「気候危機対応」を模索して地道な努力を積み重ねていた。だが、このエンジン音は、こんな道のりを一挙に吹っ飛ばすかのように聞こえた。これに先立つ1月21日、米国ワシントンDCで行われたトランプ大統領の就任式には、イーロン・マスクらビッグテックの面々のすぐ横にベルナール・アルノー会長兼CEOの姿もあった。トランプタワーがそびえ立つマンハッタン五番街には、ルイ・ヴィトンやティファニーを始め、トランプ好みのきらびやかなブランドショップが立ち並ぶ。LVMHはトランプと同じ世界の輩であることを思い起こさせた。
さて、24年度の成績はどうだったのだろう。アルノー氏は、「厳しいマクロ経済・地政学的状況下でも、底硬さを見せた」と控えめなトーンで切り出した。これまでの数年、まさに破竹の勢いで伸び続けたのに比べると、LVMHにとっては厳しい年であったようだ。グループ全体としての総収益847億ユーロは、為替損益などを除いたオーガニックベースでは前年比でかろうじて1%増となったが、ここ数年20%、23%、9%と好調な伸びを記録してきたのと比べるとかなり渋い。平常事業からの収益は196億ユーロ(14%減)、純利益は126億ユーロ(17%減)と大きく落ち込んだのは、パリ・オリンピックおよびノートルダム大聖堂の修復などに、相当な出費があったことからと説明された。確かに、ともに、国をあげての大事業であり、フランスを代表する大企業として巨額の支出を求められたようだ。それでもなんとか赤字決算を免れ、経常利益率をコロナ前の23.1%まで回復したことは、大方のアナリストが予測していた数値よりは若干よかったようだ。最終四半期、特にクリスマス商戦以降は強い上向き傾向となり、25年1月も引き続き予想以上に好調と楽観的見込みも示された。厳しい年であったにも関わらず、負債を減らし、キャッシュフローを改善させ、昨年同様の配当額13ユーロを達成したのは底力と言える。

2024パリ五輪では、プレミアムスポンサーとして目立ったルイ・ヴィトン。ショーメ(Chaumet)がメダルをデザインした他、メダルベアラーやフランス選手団のユニフォームなどで存在感を示した。写真:LVMH公式Xより
この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。