エステーは、マンション建設最大手の長谷工コーポレーション(以下、長谷工)と共同で、長谷工が運営する賃貸マンション「サステナブランシェ本行徳」の共用部で「バーチャル森林浴」の実証実験を行い、その結果、「バーチャル森林浴」によるリラックス効果と感情の変化を確認したことを2025年2月10日に明らかにした。
「バーチャル森林浴」は、山や海など自然を感じられる場所に行くのではなく、映像、音、香りによって自然に包まれる疑似体験ができる空間である。被験者の没入感を最大限に高めるため、プロジェクターや音響の選定、設置位置、最適な壁紙や香りまで詳細に検討した。香りは、北海道トドマツから抽出したエステーのクリアフォレストオイルを使用した。
本検証には、エステーならびに長谷工の社員など合計16名が参加し、「バーチャル森林浴」を体験したことで得られるリラックス効果と感情の変化を評価した。評価は、ストレス時に分泌されるホルモンである「コルチゾール」の分泌量測定や、「怒り」「混乱」「抑うつ」「疲労」「緊張」といったネガティブな感情と、「活気・活力」「友好」といったポジティブな感情の尺度を数値化するアンケート調査により行った。その結果、「バーチャル森林浴」を体験することで、ストレス指標の低下や、ネガティブな感情の緩和傾向、ポジティブな感情の増加傾向が見られた。
本検証は2024年8月に16名を対象に実施。実験デザインはクロスオーバー試験(同一の被験者に対し、両方の試験条件を実施する試験デザイン)。8名には「通常環境条件→バーチャル森林浴条件」の順に実施し、残りの8名には「バーチャル森林浴条件→通常環境条件」の順に実施した。測定方法は、バーチャル森林浴体験の直前および直後、体験10分後と20分後に唾液を採取。バーチャル森林浴体験の直前および直後、「POMS2(Profile of Mood States 2nd Editionの略。被験者の気分や不安、うつの状態を評価できる検査方法)」を含むアンケートを実施した。
検証は、
①座位安静の状態で「POMS2」を含む体験前アンケートの回答および待機(計10分間)
②座位安静の状態でバーチャル森林浴を体験、通常環境時はそのまま待機(計20分間)
③座位安静の状態で「POMS2」を含む体験後アンケートの回答および待機(計20分間)
という手順で行った。
判定基準は、唾液中の「コルチゾール濃度」からストレス指標を評価。「POMS2」におけるネガティブ感情のスコアとポジティブ感情のスコアからリラックス度合いを評価した。
POMS2で測定する因子は以下の通り。
①怒り-敵意(AH)怒りや他者への反感、強烈な怒りのほか、内心の腹立たしさや他人に意地悪したいなどの思いも示している。
②混乱-当惑(CB)当惑と認知効率の低さ。頭が混乱して考えがまとまらない状態。
③抑うつ-落込み(DD)自分に価値がない、希望が持てない、罪悪感があるなど自信が喪失している状態。
④疲労-無気力(FI)疲労感があり、意欲や活力が低下している状態。
⑤緊張-不安(TA)特徴が見られる緊張や不安の高まりを表す。神経の高ぶりや落ち着かないなど。
⑥活気-活力(VA)関係を示す。元気さ、躍動感、活力の高さを表す。①~⑤因子と負の相関。
⑦友好(F)ポジティブな気分状態。対人関係の影響を表す。⑥と関係が強い。
⑧総合的気分状態得点(TMD)①から⑤の合計点から、⑥得点を引いた結果。
なお、「⑦友好(F)」はPOMSからPOMS2への改定時に追加された項目。TMDの算出式には含まれない。
本検証の結果、バーチャル森林浴の体験により、コルチゾール濃度の低下が確認され、ストレスの低減効果が示唆された。また「POMS2」による評価では、ネガティブ感情(緊張、抑うつ、怒り、疲労、混乱)のスコアが低下しており、リラックス度合いが高まったと推察される。また、ポジティブ感情(活気)の向上傾向が確認され、気分改善効果も示唆された。