じわりとScope3基準の影響が出始めている。この基準は、商品の原材料調達から製造、販売、消費、廃棄に至るサプライチェーン全体で排出される温室効果ガスのこと。事業者の排出量だけでなく、事業活動に伴う間接的な排出量まで俯瞰して捉え、削減を目指す。製造業であれば、原料会社の温室効果ガスの排出量も削減対象になる。小売業であれば、仕入れ先のメーカーの取り組みが対象になる。例えば、イオンが21年にScope3基準による排出量の管理・削減を本格的に始めたように、大手企業を中心に取り組みは広がっていく。当然、小売業は目標達成に向けて、環境対応商品の仕入れを優先する。「バイヤーは、環境対応だから採用する、と言うようになってきた」という消費財メーカー担当者の声も増えている。商品の環境対応には時間と費用がかかる。特に中堅中小企業のコスト負担は重い。しかし、それを価格に転嫁すると、消費者は喜ばない。とはいえ、メーカーにとって棚落ちは死活問題。値上げのジレンマは、まだまだ続きそうだ。

月刊『国際商業』2025年01月号掲載