新型コロナの流行がいよいよ悪化していった2020年春頃から、英国のヘルスコンシャスな中流層の間では、「マイクロバイオームケア」という言葉がさかんに聞かれるようになった。それまでイギリス人には「病気になっても病院でタダで治してもらえるから予防など必要ない」という態度が多く見られたのだが、感染者数が急増しているのに効果的な薬が見つからず、ワクチン開発にも最低1年はかかりそうだという不安な状況に直面して、その考え方が根本から崩れていくのを感じた。

もはや医療頼みにはできない。コロナにかかって重症化したり後遺症を患ったりしないためには、自ら抵抗力の強い体を作るしかないのだ。食と健康を結びつけて考える気運がこんなに高まったのを見たのは、在英20年あまりになるが初めてのことだった。日本人には常識すぎる「医食同源」というコンセプトを知人たちに伝えると、口々に「そんなふうに考えたことは今までなかった」と驚かれた。

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