ライオンは、より快適な衣類の風合いを研究する中で、従来から求められている衣類の「やわらかさ」に加え、昨今ニーズが高まっている「さらりとした」風合いを付与する触感付与技術を確立した。本技術を取り入れた柔軟仕上げ剤で衣類を洗濯することで、衣類の皮膚への接着性を従来品と比較して、約20%低減できる。この研究内容は、「2023年度 繊維学会年次大会」「2023年度 日本繊維製品消費科学会年次大会」「2023年度 日本油化学会年会」で発表した。

図1 生活者が求める衣類の理想の風合い(2021 年6 月調査/842 名、ライオン調べ)

これまでの柔軟仕上げ剤(以下、柔軟剤)は、「やわらかい」風合いを付与することを基本機能としてきた。さらに、近年では生活者が求めるニーズが多様化し、消臭性や衣類ダメージケアなどの機能と共に、発汗時や高温多湿の環境下でも快適に使用できる「さらりとした」風合い付与機能(図1)も求められている。

そこで、衣類への「さらりとした」風合い付与を目指し、様々な風合い付与剤を探索したところ、同社が独自に開発した「シリコーン素材(以下、シリコーンA)」に優れた風合い付与効果があることを突き止めた。本研究では、このシリコーンAの風合い付与効果の影響因子を明らかにすることを目的に、衣類の物性を解析した。

シリコーンAを配合した柔軟剤(以下、シリコーンA配合柔軟剤)、および一般的な柔軟成分であるカチオン界面活性剤を配合した柔軟剤(以下、カチオン配合柔軟剤)で、綿肌着(以下、衣類)をそれぞれ洗濯し、乾燥させた衣類で、以下の項目を評価した。

風合い評価 :乾燥後の衣類の「さらりとした」風合いについて、衣類を手のひらで触ったときの官能評価(シェッフェの一対比較)を行った。
表面粘性評価:衣類表面の物性を評価するため、剛体振り子試験機を用いて、乾燥時及び湿潤時の衣類表面の粘性(以下、表面粘性)を測定した。
吸水性評価 :表面吸水性測定装置を用いて、衣類の吸水性を測定した。

■ 研究結果

(1)衣類乾燥時の風合い評価結果
シリコーンA配合柔軟剤、カチオン配合柔軟剤および柔軟剤を使わない条件で衣類を洗濯し、乾燥後の衣類の風合いを評価した。その結果、シリコーンA配合柔軟剤で洗濯した衣類の方が、より「さらりとした」風合いであることがわかった(図2)。

図2 衣類の風合い評価結果

(2)衣類乾燥時の表面粘性評価結果
「さらりとした」風合いの発現には衣類の表面物性が関与していると仮定し、物性評価の中でも、衣類と肌との間の接着性の指標として表面粘性を評価した。乾燥後の各衣類の表面粘性を測定した結果、シリコーンA配合柔軟剤で洗濯した衣類は、カチオン配合柔軟剤で洗濯した衣類より表面粘性(対数減衰率)が約20%低減することがわかった(図3)。

衣類の着用を想定すると、シリコーンA配合柔軟剤で洗濯した衣類では、表面粘性が低い、つまり肌への抵抗(肌への接着性)が低くなっていると考えられ、「さらりとした」風合い付与に繋がったと推察される。

図3 衣類の表面粘性結果(乾燥時)

(3)衣類湿潤時の評価結果
汗をかいたときのような濡れた状態を想定し、湿潤した衣類で表面粘性と吸水性を評価した。その結果、シリコーンA配合柔軟剤で洗濯した衣類は、乾燥時だけでなく湿潤時も表面粘性が低いことがわかった(図4)。また衣類の吸水性評価から、シリコーンA配合柔軟剤で洗濯した衣類は、短時間でより多くの水分を吸収することも明らかとなった(図5)。

つまり、シリコーンAを配合することで、濡れた衣類の肌への接着性を抑制できることに加え、高い吸水性により衣類最表面の水の滞留を抑制するため、「さらりとした」風合いを付与できる(カチオン配合柔軟剤で洗濯した衣類<湿潤時>との比較)と考えられる。

図4 衣類の表面粘性結果(湿潤時)

図5 経過時間に対する衣類の吸水量変化

同社は、本研究で確立した衣類の新触感付与技術をはじめとした表面制御技術により、生活者ニーズに合致した製品開発を進めていく。

本研究の技術を採用し、2023 年4 月に発売したランドリーウォーター『ソフラン エアリス』は、水のようにピュアで透明な液剤が生み出す<新感覚>柔軟剤だ。仕上がりだけでなく、お洗濯中の「気持ち」と「空気」が変わる“エアリー体験”を、3 つの新感覚、嗅覚<香り>・触覚<着心地>・視覚<デザイン>で提供している。