懸念は薄らいでいるが、悪化する可能性もある

アジア太平洋地域(APAC)の消費者の懸念は大きなものではありません。しかし、食費の高騰は、低所得の消費者にとってさらなる苦境をもたらす可能性があり、よりブランドからの援助が必要となりそうです。

国際通貨基金(IMF)と経済協力開発機構(OECD)によると、APAC全体の成長は、良くても微増にとどまると予想されており、今後18ヶ月の間に回復する地域はほとんどない中、例外なのはタイです。また、2022年にはAPAC全体でインフレ率が上昇し、23年には21年の水準にまで回復すると予測されています。

現在、APACでは、インフレが消費者に直接的な影響を及ぼし始めています。オーストラリア、インド、日本、タイにおけるMintelのファイナンシャル・トラッカー調査によると、40〜42%の消費者が現在の経済状況に無関心であると回答し、ほぼ同じ割合で「懸念はあるが、大丈夫だろう」という回答が占めています。一方、「本当に心配」という回答は14〜15%にのぼりました。

22年5月、これらの市場の消費者の46%が、「ウクライナ紛争の影響が家計に与える影響は小さい」と回答していた一方、29%は「大きな影響がある」と答えていました。

すでにMintelは、旅行、衣料品/ファッション、美容/グルーミング、外食など、不要不急の支出を減らすといった消費者の反応を観測しています。消費者は貯蓄を増やし、より高いコストパフォーマンスを求め、低価格帯の販売店で食料庫に必要なものを買いだめしています。

ブランドができる実践的な取り組み

ブランドが支援できる方法は、さまざまです。コスト上昇や製品の品質維持のためであれ、値上げを説明する際には透明性を確保することが重要です。ミンテルによると、APAC地域の消費者の約80%が、例えば食品を購入する際、顧客に対して透明性のある(例えば値上げの理由を説明するなどの)ブランドに対して忠誠心を持つと回答しています。必要な値上げを、安全性、健康、栄養など、顧客中心の価値観と結びつけることができるからです。

ブランドは、消費者に値上げの予告を十分に行い、値上げ前の買い溜めの機会を与えることも忘れてはいけません。

また、製品の耐久性、汎用性をアピールし、消費者が一つの製品を買うだけで、長期間にわたってさまざまなニーズに対応できることを示すことは、需要を高めるという意味で価値のある説明です。

消費者は、基本的な生活スキルの価値を見直してます。その目的が、単なる生存や実用性といった側面だけでなく、持続可能性や流行、やりがいへと広がっているからです。新しいことを学んだという満足感や達成感を与える(そしてソーシャルメディアで共有できる)ことで、ポジティブで「助け舟」のようなブランドイメージを作り上げることができます。

また、ブランドは、デザイン/美学、機能性、社会的責任、排他性、限定製品などに焦点を当てることで、さらに価値認識を高める機会を秘めているといえます。

迷った時こそ、正しい行動を!

社会的責任と「助け船」として役割を果たすことは重要です。この苦難の時代に、消費者が忠誠心を持って寄り添うのは、こうした時代に自分たちとそのコミュニティを助けてくれたブランドでしょう。

コストや価格を抑える努力、消費者を守るための品質維持、ブランドが活動するコミュニティでの慈善活動など、すべての人の共通の利益に向けてどのように活動しているかを示すのです。

例えば、フィリピンのマクドナルドでは、75フィリピンペソ(約1.40米ドル)という単一の価格帯で、お客がスナックの組み合わせをカスタマイズできる「McSavers Mix and Match」を導入しています。

また、消費者はブランドに対して、サステナビリティの問題を推し進め、予算内でサステナビリティを実現しやすくすることを依然として求めています。

例えばテクノロジーブランドであれば、廃棄物の削減に貢献することができるでしょう。中国のリサイクルプラットフォームXianyuは、ペアにならなくなった片耳のAirPodsのマッチングフェアを開催しました(中国)。 さらに、ブランド間のコラボレーションも持続可能な目的を達成するための素晴らしい方法となりえます。例えば、サムスンはパタゴニアと共同でマイクロプラスチックの廃棄を制限し、水の使用量を最小限に抑える洗濯機を開発しています(韓国/米国)。

つまり、ブランドができることはたくさんあるのです。ブランドに今できることについては、弊社のレポート The impact of inflation on APAC consumers: 2022-23をご覧ください。

消費者が「何を」「なぜ」求めているかを探るエキスパート

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ミンテルは、消費者が「何を」「なぜ」求めているかを探るエキスパートだ。マーケットインテリジェンスのリーディングカンパニーとして、世界と国内の市場に関する独自の視点を提供する消費者/市場/新商品/競合他社の分析を行い、市場の将来的な展望について必要な情報を多角的に提供している。1972年の会社設立以降、長年の蓄積に基づいた独自の視点で、クライアントのより迅速な経営決断を可能にする予測分析と専門家のレコメンデーションを提供。ミンテルの使命は、ビジネスと人々の成長をサポートすることである。

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月刊『国際商業』2022年11月号掲載