刊行:2022年4月
価格:2,200円(税込)

本書に書かれているのは一人の風俗文化史研究者の生きた証しである。早稲田大学理工学部に入学したはいいが、授業料が払えず日本経済新聞社で毎日アルバイトしていたこと。結局、単位不足で卒業できず2年間留年したこと。その後、日経の隣にあったレストラン「セ・ジェル」で働いていたガールフレンドの「スミちゃん」に相談して、当時は資生堂さえかなわなかったモダンなイメージの化粧品会社、パピリオ化粧品に就職したこと。パピリオ時代には、本業の仕事のほかに、お歯黒などの化粧史の勉強をしていたこともあり、日本風俗史学会に参加、長く理事を務めたこと。そんな日本文化史・化粧史研究の泰斗による回想録。さまざまな人たちとの出会いがもたらした豊かな学究人生を回顧している。

さらに単行本未収載の論考集「日本化粧風俗小史」も収録。「おはぐろと日本人」では、おはぐろが2000年以上もの永い間、日本だけに発達した化粧風俗で、それも日本のすみずみにまで広まった風習であったことを紹介。「化粧品小史」では、初めにおはぐろのうつりかわりについて言及。次に「おしろい」について、その起源から、持統天皇6年(692年)、元興寺の僧観成が初めて鉛粉(鉛おしろい)を作って献上したこと。その後、変遷をたどり本当におしろいらしいきめ細かいものができたのは江戸時代に入ってからで、「本朝世辞綺談」に書いていた、おしろいを外国人が来て買っていったという話まで紹介している。

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