ブランドイメージ重視のネットショップを作りたい。そう願う企業から支持を集めているのが、Cafe24(カフェ24・https://www.cafe24.co.jp)だ。月額費用、販売手数料は無料。取引先のビジネスが成長しなければ、Cafe24の業績が伸びない仕組みだから、お互いが切磋琢磨する共存共栄のビジネスになる。しかも、デザイン性重視のサイト構築が可能で、アパレルやコスメなどブランド価値を大切にする企業ほど、Cafe24に注目する。1999年に韓国で生まれたグローバル企業Cafe24にとって、日本は重点戦略市場の一つで、今後も多様なサービスを顧客起点で導入するという。Cafe24 Japanを率いる正代誠社長に話を聞いた。
取引先はサクセスパートナー
--まずはCafe24のビジネスについて教えてください。
正代 日本と同様に韓国でも、90年代、2000年代はネットのインフラが整備され始め、通販の軸は雑誌やチラシからECにシフトしていきました。ECの潜在成長力を捉え、Cafe24はECサイトの構築、広告、決済、物流などをワンストップで提供するビジネスを展開し、右肩上がりの成長を遂げています。いまや韓国では190万のショップを抱え、市場シェアはトップになっています。日本でのビジネスは2018年10月から始めました。EC化率の上昇に伴い、アパレルを中心に取引先を増やしてきましたが、コロナ禍でECが注目されており、多様な業種から問い合わせが急増しています。
--ECサイト構築のワンストップサービスはたくさんあります。競合との違いは、どこにあるのでしょうか。
正代 多くの機能が無料で使用できることです。例えば、初期費用と月額費用は0円です。販売手数料、越境ECショップ、多言語対応、モバイル対応、SSLも、代金をいただいていません。また、競合はサーバーの提供容量、商品登録数、画像登録数などを増やすのに料金がかかるケースもありますが、Cafe24は無制限で利用できるんです。さらに日本法人にいるコンサルチームへの相談も、基本的に無料で提供しています。このようにEC参入へのハードルを低くしているところが、Cafe24の最大の特徴だと思います。
--タダより怖いものなし、と思われませんか。
正代 そう勘違いされることもありますが、Cafe24のコンセプトを理解していただくと、不安は払拭されます。たとえば、有料のオプションサービスは、運営者の人数は10人まで無料で11人以上から有料(1名・1ヶ月・102円)、掲示板数は13個まで無料でそれ以上は1個・1ヶ月・20円、掲示板の容量は300MBまで無料でそれ以降は100MB・1ヶ月・51円です。そのほか、ドメイン(年・1518円~)、メール配信サービス(3ヶ月・5948円~)などがありますが、いずれもお客様のビジネスが成長することで利用するものばかりなんです。つまり、Cafe24は、お客様に低コストでECに挑戦していただき、お客様に成長していただくことで事業が成り立っているんです。Cafe24と取引先は共存共栄ということですね。
--入り口は無料でも、販売手数料が高額では、ブランドは投資が継続できず、成長が頭打ちになるケースがあります。そのリスクをCafe24は取り除いているのですね。
正代 ブランドにとって販売するほどサービス手数料が上がると、結果的に利益率が下がってしまいます。ブランドのイメージを訴求するには、写真や動画を思う存分使いたいが、大きなデータになるほど経費がかかるとなると、ブランドの成長力を削ぐことになりかねない。それなら、Cafe24は、物流や決済代行などの多様なビジネスパートナーと連携し、コストを抑制することで、取引先にはビジネスに集中してもらう。そして取引先が成長すれば、我々の業績も伸びる仕組みになっています。Cafe24の経営哲学の一つに「サクセスパートナー」と掲げているのは、これが理由なんです。取引先の成長を私たちが支援することで、新しい歴史を作る。この哲学は、韓国だけでなく、日本でも支持を集めると思っています。
無料サービスは拡張する方針
--実際、日本法人の業績は伸びていますか。
正代 サイトのデザイン性に定評があることから、アパレル、コスメなど、ブランドの世界観を表現したい企業に声をかけていただくケースが増えています。このデザインも、無料テンプレートを多数用意しており、Cafe24が選ばれる理由の一つになっています。21年上半期のショップ数は、前年同期比4倍、GMV(流通総額)は2倍になっています。とはいえ、コロナ禍でリアル店舗の集客が落ちたことから、日本のEC市場は拡大傾向に入っていますが、思うように成長できず、悩むケースも多いように思います。やはり、既存会員がいる取引先はECでも業績を伸ばすことができますが、一から顧客を獲得する場合は、ビジネスを軌道に乗せるのに時間がかかります。また、ECに不得手がゆえに、商品、メッセージ、写真、動画を大量に登録してしまい、情報過多のサイトになることも見られます。そのような悪循環から脱せるように、Cafe24のコンサルチームはサポートしています。
--特に成長している分野はありますか。
正代 巣ごもり需要によって食品のECは活発になってます。アパレルでは、オーストラリア発のベビーグッズブランドが年300%で成長中で、月商が前年比2倍になっている日本の化粧品ブランドもあります。いずれのブランドもスタイリッシュなECサイトとSNSの連動で、新客、リピート客を獲得しているのだと思います。
--Cafe24は日本市場において、どのような成長戦略を描いていますか。
正代 Cafe24にとって、日本は重点地域ですから、積極的に取引先を増やしていく考えです。これまでは、韓国でも得意のアパレル、コスメに力を入れていましたが、もっと視野を広げてベビーやペットなど、日本のライフスタイルを彩るブランドにもアプローチしていきたい。日本参入から3年を経て、日本法人のメンバーは50人を超え、ビジネスの基盤は整いました。より攻勢に打って出ます。
--競争力の源であるサービス面の拡張を考えているということでしょうか。
正代 無料提供のサービスを増やします。特に、Cafe24の特徴であるサイトのデザインについて、より多くのテンプレートを用意します。また、サポート面の強化では、取引先の悩みを解消できるように弊社サイト内での情報発信を強化するほか、コンサルチームの人員も増やします。さらに韓国本社には日本未導入のサービスもあります。それを日本の取引先の要望に合わせてカスタマイズし、どんどん取り入れていきたいと考えているんです。
越境ECで販売とプロモーションを両立
--日本企業の課題は、少子化による国内市場のシュリンクです。Cafe24の越境ECサービスが無料であることも、取引先にとって大きな魅力になっていると思います。
正代 Cafe24の越境ECは国別ではなく、言語別になっています。これは珍しいビジネスモデルですが、非常に効率的だと思います。現在は、英語、中国の繁体語と簡体語、スペイン語、ポルトガル語、韓国語、ベトナム語の七つに対応しており、世界人口の多くにアプローチできる仕組みになっています。配送では、佐川急便、ヤマト運輸とパートナーシップを結んでいます。例えば、小規模のビジネスの場合、物流倉庫の使用量や家賃などのコストは重たい負担になります。ですから、例えば、佐川急便のECセンターに商品を納品していただき、そこから配達国へ届けることも可能です。利用料は従量制ですから、新興企業でも世界中の生活者に商品を届けることができます。
--商品が動かなければ、費用が発生しないのは小さい事業者には恩恵がありますね。
正代 越境ECの伸び代は大きい。日本では中国市場の話題が大半ですが、日本から台湾への輸出は増えてます。また、インドネシアはコスメ需要が増えており、今後のEC化率の増加を考えれば、ビジネスチャンスは十分にあると思います。
--正代さんは、佐川急便の国内外を繋ぐ国際一貫物流を担当し、21年2月にCafe24 Japanの社長に就任。日本と海外の連動に興味があったのでしょうか。
正代 社長を引き受けた理由の一つは、先ほども申し上げたように、お客様と一緒に成長するというCafe24のコンセプトに共感したからです。自社利益を追求すると、商談は価格交渉ばかりになりがちですが、Cafe24の場合は、お客様に喜んでいただくことが自分たちの成長に直結する。この気持ちが良いビジネスモデルに非常に興味を持ちました。
また、佐川急便に勤めている時も、越境ECの可能性を追求していたのですが、多くの企業が不安や課題を抱え、なかなか一歩を踏み出すことができない。国内ECは競争が激化し、薄利での勝負に陥っている会社も少なくない。日本に商品を買いに来たい外国人はたくさんいますが、コロナ禍でインバウンドがストップしています。
ただ、この環境下だからこそ、越境ECを活用すべきなのです。日本のブランド、商品に関心を持ち、訪日時に買っていたお客様に越境ECで商品を紹介し、買っていただく。その時に写真や映像を駆使して、作り手の人柄、ものづくりへのこだわり、企業がある地域の魅力などを伝えれば、ブランドとお客様の絆が育まれます。単なる物売りではなく、プロモーションの一環として越境ECを活用すれば、海外渡航の制限が解かれるアフターコロナにおいて新しいビジネスの基盤になるでしょう。
インバウンドが戻ったとき、越境ECで商品を買ってましたよ、と言ってくれる外国人観光客が一人でも多くいたら、どれほど社員の方々は嬉しいことでしょうか。その喜びは、組織を強くする原動力になるはずです。そう考えると、Cafe24のビジネスモデルは、多様な視点から取引先のビジネスを応援することができます。グローバル企業ならではの経営資源を駆使して、日本企業の成長を支えていきます。
(取材協力:Cafe24 Japan)