老舗刃物メーカーの貝印がトップ交代に踏み切った。新社長は、1989年から創業家3代目として経営を切り盛りしてきた遠藤宏治氏の長男、遠藤浩彰氏である。2008年の大学卒業後に入社し、生産部門のカイインダストリーズや海外関連会社kai U.S.A.ltd.への出向、国内営業本部や経営管理本部の副本部長、経営戦略本部、マーケティング本部、研究開発本部の3部門の本部長を経験。18年から取締役副社長を務め、21年5月25日、満を持して貝印とカイインダストリーズの社長兼最高執行責任者(COO)に就いた。貝印の創業は1908年。創業113年目の老舗刃物メーカーをどう率いるのか。新社長に率直に尋ねた。

コロナ禍で増えた新しい顧客接点

――コロナ禍が世界中に影響を与えています。貝印の状況はいかがでしょうか。

遠藤 岐阜県関市に本拠を置く私どもは、カミソリや爪切りなどを含むグルーミング、ビューティーケアのほか、包丁を核とした家庭用関係、BtoBでは外科手術や病理検査などに使用する医療用の刃物、工業用の特殊刃物など、刃物と呼ばれるほとんどの商品を手がけています。この中でもBtoCの商品はコロナの影響を大きく受けています。国内については、外国人観光客がダース買いしていた爪切り、ホテルのアメニティ向けカミソリなどが落ち込み、インバウンド需要の消失が痛手になっています。また、マスクを日常的に使用することになり、ひげそりの頻度低下なども影響が出ています。ただ、家庭用品については、在宅時間が長くなる一方で、外食の休業なども重なり、家庭で料理する時間が増えています。貝印は、お菓子カテゴリーでシェアトップを獲得しており、在宅中のお子さまとのコミュニケーションにお菓子作りが最適であることを発信し、一気に需要が高まりました。例えば、1回目の緊急事態宣言が発せられた2020年4月、5月はお菓子作りの閑散期なのに好調な売れ行きを示しました。

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