資生堂は、中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」を2月9日に公表。今年からスタートする2021年~23年までの3年間で取り組む基本戦略をまとめた「WIN 2023」と、さらにその先の30年に向けたVISIONを策定した。同戦略の実行により、引き続き「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」を目指し、さらなる成長と発展のために進化していく考えだ。

同社は、スキンビューティー領域をコア事業とする抜本的な経営改革を実行し、30年までにこの領域における世界ナンバー1の企業になることを目指す。外部環境が急激に変化する中、21年~23年の3年間は、これまでの売上拡大による成長重視から、収益性とキャッシュフロー重視の戦略へと転換し、「スキンビューティーカンパニー」としての基盤を盤石にするために、下記の取り組みを実施する。

まず、21年を「変革と次への準備」の期間とし、With/Afterコロナへの対応・準備をしながら、事業ポートフォリオの再構築を中心とした構造改革、財務基盤の強化に集中。また、創立150周年を迎える22年は「再び成長軌道へ」の年と位置づけ、インバウンドの回復とともに、グローバルブランドのさらなる成長およびデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを加速させる。

そして、最終年度となる23年は「完全復活」の年と定め、「スキンビューティーカンパニー」として、売上高1兆円程度、営業利益率15%の達成を目指す。さらに、ブランド・イノベーション・サプライチェーン・DX・人材組織への積極的な投資については、30年まで強化していく。

〝Shiseido United Transformation〟と位置付ける「WIN 2023」の具体的な取り組みでは、主要戦略として「高収益構造への転換」「スキンビューティーへ注力」「成長基盤の再構築」の三つの柱を設定。「高収益構造への転換」では①事業構造改革による収益性改善②コスト競争力強化・生産拠点の生産性向上③中国を中心としたアジア圏での成長強化を重点項目とする。「スキンビューティーへ注力」においては①スキンビューティーブランド育成・ポートフォリオ拡充②他社との協業によるイノベーション強化③インナービューティー事業の開発の3点を軸に据える。「成長基盤の再構築」では、①サステナビリティを中心とした経営への進化②ブランドを強くするマーケティングの革新と組織強化③デジタル事業モデルへの転換・組織構築④人材・組織のさらなる多様化と能力開発の4点を進める。

財務戦略においては、財務KPIとして、23年までの3年間は、構造改革により筋肉質な財務状況を確立し、安定的なキャッシュを生み出すための基盤再構築のフェーズと位置付ける。その中で、中核事業であるスキンビューティー領域の強化、基盤再構築のための構造改革などを通じて、営業利益・EBITDAを改善し、事業そのものの収益性を引き上げる。23年の目標として、売上高1兆円程度、営業利益率15%のほか、EBITDAマージン20%超、フリーキャッシュ・フローで1000億円程度を目指す。資本効率については、NPV(正味現在価値)・ハードルレート(投資を行う上で必要最低限とされる利回り)などを総合的に勘案しながら、23年には投下資本利益率(ROIC)で14%、ROEで18%の実現を目指す。

また、キャッシュフロー改革・戦略的投資アロケーションについては、キャッシュインフローとして、①スキンケア強化、構造改革などを通じた「事業自体の収益性改善」➁在庫の効率化、調達から生産のリードタイム短縮などの「キャッシュフロー改革」③ポートフォリオの見直し、といった取り組みで、3年間累計で5000億円を超えるキャッシュを創出する。これらキャッシュについては、企業価値の最大化に向けて、基盤再構築への構造改革、人材育成やコア事業であるスキンビューティー領域へのマーケティング、デジタル・IT・工場などの成長投資、負債の縮減に充てるとともに、株主還元を強化する。

その株主還元では、直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による「株式トータルリターンの実現」を目指しているが、フリーキャッシュ・フローの状況を重視し、自己資本配当率(DOE)2.5%以上を目安とした長期安定的かつ継続的な還元拡充を実現する。「WIN 2023」においては、不透明な経営環境の中でもDOE2.5%以上の安定的な増配を目指す。その後中長期的にはEPSの成長に合わせた配当を実施していく。

30年に向けたVISIONでは、「PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY」として、生涯を通じて一人一人の自分らしい健康美を実現する企業となることを目指す。同時に、サステナブルな社会の実現を目指し、本業であるビューティービジネスを通じて世界2億人の人生に寄り添い、幸福を実感できる機会を提供し、スキンビューティー領域における世界ナンバー1となり、売上高2兆円、営業利益率18%の達成を目標とする。これらのことを実行することで、資生堂の企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」を実現していく考えだ。