ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業の松尾研究員が、日本油化学会「ヤングフェロー賞」および同関東支部「若手研究者奨励賞」をダブル受賞した。学会で発表した「新感触を生むクレンジング製剤の安定化技術」の構築において、若手研究員の模範となったことが評価された格好だ。ダブル受賞は同学会で 2 年ぶり、化粧品メーカーとしては初の快挙となる。
発表内容は、クリームクレンジングに関連する内容だ。クリームクレンジングは、多量の油滴が少量の水相に閉じ込められた水中油型のエマルション製剤で、肌になじませるときに「コクのあるクリームが肌上でオイルのように変わる」独特な使用時の変化感が市場で支持されている。この変化感は、肌になじませたときに、水と油を隔てる界面の中に閉じ込められていた油が一気に外に飛び出してくることで生じるが、その変化が急激であればあるほど、驚きと感動を与える使用感につながる。
この急激な変化感を生み出すためには、油を閉じ込めている界面の設計が重要だ。従来の界面の設計は、生卵の殻が割れたときのように、肌になじませると界面が壊れ、油が飛び出る、というもの。しかし、変化感を追求しようと、卵の殻にあたる界面を薄くもろくしてしまうと、界面が衝撃に弱くなり製剤の安定性が損なわれ、保管時に簡単に分離してしまうことが課題となっていた。
そこで、急激な使用感の変化がありながらも、安定性に優れた製剤の開発に挑戦。同研究では、柔軟性のある風船のような界面にすることで、それらが両立できないかという発想で検証を重ねた。風船は柔軟性があるため弱い力では簡単に割れないが、ある一定の力が加わると一気に破裂する。この新たな着想で検討した結果、界面の粘性を高めることで、風船のような性質に変えられることが分かった。
この技術を用いることで、クリームからオイル状に急激に変わる使用感と安定性との両立に初めて成功。この技術は現在、ポーラ・オルビスグループの製品に活用されている。
同技術は、クレンジング化粧料にとどまらず、あらゆる製剤において新たな驚きのある感触カテゴリーの創出を可能とする。同社は、今後も革新的な製剤研究を進め、業界の発展に貢献するとともに、お客に驚きと感動を提供する製品の提供を目指す考えだ。