地震、豪雨――。自然災害が相次ぐたび、当たり前の日常がいかに尊いものかを思い知らされる。

先日、三重県伊勢市で御木本製薬が開いた「ビューティーフェスタ」に足を運んだ。企画の中心を担ったのは若手社員である。社員が伊勢うどんや唐揚げ、綿あめ、かき氷などをつくり、アットアロマと連携した香りの体験も用意した。地元高校の吹奏楽やロックバンド、ダンスも会場を盛り上げ、多くの地域住民でにぎわった。

印象に残ったのは、そこに肩書の壁がなかったことだ。取締役や執行役員も料理をつくり、OBも顔を見せた。幹部の家族と社員が初めて顔を合わせ、談笑する場面もあった。若手が考え、周囲を巻き込み、幹部も社員も一緒になって汗をかく。会社への愛着が生まれ、世代や部署を超えたチームワークも育つ。地域貢献であると同時に、インナーブランディングの場にもなっていたのだろう。幹部層も、企画を主導した若手と、それを支えた社員の姿に確かな手応えを感じたに違いない。

少子高齢化や担い手、資金の不足を背景に、地域の祭りを維持することが難しくなっている。だが、祭りは単なる催しではない。子どもたちが胸を躍らせ、大人たちが語らい、地域の人々が同じ時間を共有する。そこで生まれた思い出は、何十年たっても心に残る。

地域に信頼されなければ、人から選ばれる企業にはなれない。企業が地域の一員として、こうした場をつくることにも大きな意味があるのだと思う。

実際に会場に身を置き、祭りを楽しむ人々の笑顔を見ながら、そんなことを考えた。災害に見舞われた日本各地にも、一日も早く、こうした穏やかな日常が戻ることを願っている。★

月刊『国際商業』2026年11月号掲載