コーセーは、ミカンの一種であるタチバナの成熟した果皮から得られる「橘皮抽出液」にメラニンの産生と受け渡しを抑制する効果があることを発見した。具体的には、表皮細胞を介したメラノサイト活性化の抑制と、メラノサイトから表皮細胞に受け渡されるメラニン取り込みの抑制のメカニズムがあることを確認した。同研究成果の一部は、2026年3月26~29日に開催した日本薬学会第146年会にて発表した。

図1:「橘皮抽出液」のシミ抑制メカニズムとメラニンの取り込み抑制効果

肌に加齢とともに現れるシミは、多くの人が抱える代表的な肌悩みの一つだ。シミは紫外線などの刺激で活性化したメラノサイトが過剰なメラニンを作り、それがより肌の表層に近い表皮細胞に取り込まれ、蓄積することで発生する。つまり、シミの形成にはメラニンを作るメラノサイトと、それを受け取る表皮細胞間でのやり取りがキーファクターになる。

シミの形成を抑える成分として、熟したミカン科の果皮を乾燥させた橘皮(陳皮)が知られており、メラノサイトの活性化を直接抑える作用があることが確認されていた。しかし、シミ形成に重要な「メラノサイトと表皮細胞のやり取り」の中で、橘皮がどのように作用するかは確認できていなかった。そこで同研究では、橘皮のシミ抑制メカニズムの全容を明らかにすることに挑んだ。

シミの原因となるメラニンは肌の奥にあるメラノサイトで形成される。表皮細胞が炎症状態になると、メラノサイトにメラニンをつくらせる指令となるSCFというタンパク質の産生が増加し、メラニンが生成される。「橘皮抽出液」には抗炎症作用があることが確認されているため、表皮細胞に添加することでこのSCFの産生量の変化を検証した。

まず、「橘皮抽出液」を表皮細胞に添加した結果、細胞内のSCF産生量だけでなく、細胞外へのSCF放出量も減少することが明らかになった。次に、表皮細胞からメラノサイトへの影響を検証するため、その表皮細胞から放出された成分を含む培養液をメラノサイトに添加したところ、「橘皮抽出液」を添加しなかったものと比べて、メラニン産生に関わる酵素であるチロシナーゼの活性が減少していることが確認できた(図2)。これらの結果から、「橘皮抽出液」は表皮細胞に働きかけ、メラノサイト刺激因子の放出を抑えることでも、シミ形成抑制にアプローチできることが分かった。

図2:「橘皮抽出液」添加によるSCFの放出量と培養液添加によるチロシナーゼ活性

シミが発生するメカニズムの一つとして、メラノサイトで産生されたメラニンを表皮細胞が受け取り、細胞内に取り込むことがあげられる。このメラニンの取り込みは、表皮細胞が産生するPAR2というタンパク質によって促進されることが知られている。このPAR2はシミの周辺部にも存在しており、元々あるシミが広がっていく要因にもなり得る。そこで、「橘皮抽出液」を添加することでPAR2の産出量および表皮細胞のメラニン取り込み量がどう変化するかを検証した。

まず、「橘皮抽出液」を表皮細胞に添加した後のPAR2の産生量を測定したところ、その産生が抑えられていることを確認した。次に同成分の添加により、実際に表皮細胞のメラニン取り込み量が減少するかを確認した。表皮細胞にメラニンと「橘皮抽出液」を添加した結果、添加しなかった表皮細胞に比べて、メラニン取り込み量が減少した(図1および3)。これらの結果から、「橘皮抽出液」を添加することでPAR2の産生を抑え、シミを拡げる要因となる表皮細胞のメラニン取り込みを減少させる効果があることが分かった。

図3:「橘皮抽出液」添加による表皮細胞のメラニン取り込み量

以上の結果から、「橘皮抽出液」には、表皮細胞からのSCF放出を減少させてメラノサイトの活性化を抑制する作用と、PAR2の産生を抑えて表皮細胞のメラニン取り込みを防ぐ作用があることを見いだした。

同研究により、「橘皮抽出液」はこれまで知られていたメラノサイトへの直接的な作用に加え、表皮細胞にも作用してメラニンの産生と受け渡しによる表皮細胞への蓄積を防ぐメカニズムがあることが明らかになった。コーセーでは、今後も幅広い肌悩みのメカニズム解明や、それに基づいた成分開発を継続し、科学の英知を結集させることで、お客のニーズに応える化粧品の提供につなげていく。