味の素は、従来パーム油由来の脂肪酸を原料とするアミノ酸系界面活性剤の製造において、世界各地で安定的に調達可能な糖のみを原料とする、発酵技術を用いた新製法を開発した(特許出願中)。同技術により、石油由来原料のみならず、パーム油も使用しないアミノ酸系バイオ界面活性剤(微生物が作る界面活性剤、「バイオアシルグルタミン酸」を指す)の提供が可能となる。この技術を活用することで、従来のバイオ界面活性剤で課題とされていた色やにおいの問題を解決し、より高い泡立ちを実現した。
近年、環境への配慮を含む持続可能な社会の実現に向けて、化粧品や洗剤の原料にも変革が求められている。特にパーム油は、世界中で広く利用されている一方、生産拡大に伴う熱帯雨林の減少、それに伴う二酸化炭素放出量の増加、農園で働く労働者の人権問題など、環境的・社会的課題が国際的に指摘されてきた。またパーム油の生産地は緯度10度以内の温暖多雨な地域に限られるという供給上の制約もある。こうした背景から、パーム油の使用削減や代替となる持続可能な原料選択の研究が進められている(※1)。
微生物が産生するバイオ界面活性剤は、天然由来で生分解性が高く、環境負荷が低いことから注目を集めており、技術革新やコスト低減を背景に市場は急速に拡大している。現在、世界におけるバイオ界面活性剤市場は、2021年から30年にかけて年率13%の成長が見込まれている(※2)。しかし従来のバイオ界面活性剤には、泡立ちの弱さ、着色、におい残りといった点で、化粧品への利用が難しいという課題があった(※3)。今回開発した発酵法を用いた新製法によって製造されるバイオアシルグルタミン酸は、アミノ酸系界面活性剤の一種であり、市場ニーズと技術課題を踏まえ、同社がアミノサイエンス®の知見・ノウハウを生かした研究開発の成果だ。
同技術では、石油由来原料および将来の供給不足が懸念されるパーム油を使用せず、糖を原料とすることで、消費地近くでの生産が可能となる。これにより、輸送に伴うGHG(温室効果ガス)排出削減への貢献も期待される。
機能面では、従来のバイオ界面活性剤が持つ泡立ち、色・においといった課題を解消し、アミノ酸系界面活性剤が持つ肌へのやさしさとあわせて、持続可能でありながら機能性を備えた化粧品素材の製法を開発した。同技術で製造されるバイオアシルグルタミン酸は、石油・パーム油由来の界面活性剤に代わる新たな選択肢として、シャンプーや洗顔料など幅広い化粧品分野での展開が期待される。肌への刺激を抑えつつ、自然な泡立ちとほぼ無色・無臭の仕上がりを実現し、化粧品の品質向上と顧客満足度の向上に貢献していく。
現在、同社は量産化および商用化を見据えた実証実験を進めるとともに、化粧品業界への技術紹介を行っている。26年中にお客による評価を目的とした試作品のサンプル出荷も開始する予定だ。今後は石油・パーム油由来原料に依存しない製造に加え、適切な生産地の選択を通じて、バリューチェーン全体でのGHG排出量削減にも貢献できるよう開発を進めていく。
同社は持続可能な原料の活用による、環境に配慮した製造技術を通じて高機能な素材の開発を推進し、今後も肌にやさしく、心地よい製品を生活者に提供していくとしている。環境および社会課題に配慮した持続可能な素材の開発とお客様への提供を通じて、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献するというパーパスの実現を目指している。
(※1)出典:WWF-Report-Palm-Oil-Searching-for-Alternatives.pdf
(※2)出典:https://unit.aist.go.jp/ischem/ischem-bcv/08_bs_research.html
(※3)出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/seibutsukogaku/102/6/102_102.6_286/_pdf/-char/ja






















