日本メナード化粧品は、三信鉱工との共同研究により、天然鉱物「セリサイト(絹雲母)」を微細化することで、水中でみずみずしく軽やかな使い心地のゲルを形成する現象を発見した。このセリサイトのゲルは、従来のゲル化剤の“重さ”や“のびの悪さ”といった課題を解決し、快適な使用感の実現に貢献すると期待される。

なお、同研究の成果は2025年10月14~15日に大阪で開催された「粉体工学会2025年度秋期研究発表会」にて発表した。

化粧品には、粘度や硬さを調整したり、製剤の安定性を高めたりするために「ゲル化剤」が広く使われている。しかし、従来のゲル化剤は、“重さ”や“のびの悪さ”といった、快適な使い心地を損なう課題があった。ゲル化剤は、化粧品の粘度や硬さを調整したり、製剤の安定性を高めたりする目的で広く用いられ、高分子系のポリマーや多糖類(例:カルボマー、キサンタンガム)、粘土鉱物など、さまざまな原料が使われている。

粘土鉱物は、その層状構造の重なり方や結合の強さによって性質が異なり、水を吸収して膨らむ「膨潤性粘土鉱物」(例:モンモリロナイト)と、水が層間に入り込まない「非膨潤性粘土鉱物」(例:セリサイト、カオリナイト)に分類される。これまでゲル化剤として主に使われてきたのは、吸水性や吸着性に優れた膨潤性粘土鉱物だが、粘土鉱物を用いたゲルは、使用感に“重さ”や“のびの悪さ”を感じさせることが多く、使い心地の面で課題があった。

膨潤性粘土鉱物、非膨潤性粘土鉱物の違い

この課題に対し、メナードと三信鉱工は、天然の粘土鉱物である「セリサイト(絹雲母)」に着目。セリサイトは、絹のような光沢を持つ天然の粘土鉱物で、天然のマイカ(白雲母)が微細な結晶の集合体となったもので、薄い層が幾重にも重なる層状構造をしている。ファンデーションなどの化粧品に広く使われており、粒子が非常に細かく、肌の上でなめらかにのびる独特の感触や、銀白色の真珠のような光沢と高い透明感を併せ持ち、肌を自然に明るく見せる効果が特徴だ。また、皮脂を適度に吸着する性質があるため、化粧崩れを防ぐ効果もある。こうした特性から、セリサイトはファンデーションなどの化粧品に広く用いられている。

通常、セリサイトは層間の結合が非常に強固な非膨潤性粘土鉱物であるため、水を加えてもゲルを形成することはない。しかし今回、湿式粉砕によって粒子を微細化することで、平均粒子径1μm以下の微粒子にし、水中でゲルを形成する現象を発見した。X線散乱測定により、粒子が膨潤していないことが確認されたため、微細化されたセリサイトの粒子間で相互作用が働き、カードハウス構造をとることで水をその隙間に閉じ込め、ゲルが形成されたと考えられた。この微細化されたセリサイトのゲルは、みずみずしく軽やかな感触で、塗布後はセリサイト特有のサラサラ感が持続する。この使い心地は、従来の粘土鉱物で形成されるゲルとは一線を画すものだ。

セリサイトのゲル形成の原理

今回の発見により、セリサイトを画期的なゲル化剤として活用するという新たな可能性が見いだされた。微細化されたセリサイトは、重さを感じさせない快適な使い心地を実現する新しいゲル化剤として、従来の粘土鉱物のゲルと比較して、軽やかでのびのある快適な使用感をもたらし、化粧品開発の可能性を大きく広げると考えられた。今後、この特徴的な使用感を生かしたさまざまな化粧品開発に応用していくとしている。