佐藤久美子(さとう・くみこ)
1996年から化粧品輸入ビジネスに従事。「スイスライン」「ユイルエボーム」といったブランドを日本市場に導入。エコサート認証コスメとの出会いをきっかけにオーガニックコスメのセレクトショップ「オーガニックマーケット」をオープン。1999年よりSLJ代表取締役。

似通う品ぞろえでも明暗際立つ売り場づくりの妙

酷暑が続いているとのニュースから一転、到着したパリは25度。涼しさを運んでくれた、と取引先におだてられて気を良くしながらも欧州のあまりの気温差に、恐れおののく私。とはいえ爽やかな気候は心地よい。神様からのプレゼントとばかりに、市場調査のスタートはギャラリーラファイエットから。地下階全体に広がるウェルネス・ギャラリーは、クリーンビューティーの宝庫。ポップアップの催しやカフェのにぎわいなど、安定の盛況ぶりでテンションが上がる。ヘアケア、サプリメントのコーナーが広がっているように感じる。トータルケアを意識する層にクリーンビューティーがはまるのか。またはトータルなケアに人の意識が向き始めているのだろうか。カフェも満席だ。しかし次に訪れたプランタンのクリーンビューティー売り場は閑散としている。別館の地下階にあるのだが、そのせいではない。何か楽しくないのだ。本館のラグジュアリーブランドフロアの買い物客も少ない。至近距離であるのにもかかわらず、違いを見せつけられる。魅力ある売り場づくりには、ブランドを取りそろえるだけではない「何か」が必要なのだと、まざまざと感じさせられる。

デパート視察を切り上げ、ディスカウント販売の薬局シティ・ファルマに行くと、人でごった返している。レジ待ちの行列が入り口まで続くほどの大混雑ぶりだ。クリーンビューティーコーナーを品定めしていると「このブランドは日本でもはやっているのか?」とマダムに声を掛けられる。まるでピーク時の通勤電車内のような人混みの中、「おすすめを教えてくれ」と言われ好みの製品をあれこれ伝えると、それぞれを複数個、買い物かごにポンポン入れていくのを見て「もしや転売?」と一瞬よぎりながらも、首をかしげながら今回のお目当て、レ・アール駅にある巨大商業施設「フォーラム・デ・アール」(Forum des Halles)に向かう。

ここにある大型ファーマシー「グランデ・ファーマシー・デュ・フォーラム」(Grande Pharmacie du Forum)は、ラグジュアリー系のブランドも一部をプロモーションと称した割引価格で販売している。広い通路の右はラグジュアリー系、左はナチュラル・オーガニックとセルフ系に分かれた構成はとても見やすく、ラグジュアリー系にはブランドから派遣された販売員がいる。オーガニック系の品ぞろえも充実している。この店舗も大盛況で、レジの行列は幾重にもなっている。デパートやパラファーマシー(医薬品以外を扱う薬局)との集客の差は「価格」なのであろうが、ビューティーとヘルシー、生活雑貨がそろい、遜色のないブランドまでが安く買え、しかも交通の便が良いとなれば、コスパ、タイパが重視される時代には必然なのだろう。

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