日本メナード化粧品は、メラニンやコラーゲンの量、肌の明るさやシワの深さに「NEIL1」と呼ばれるDNA修復酵素の発現量が関係していることを発見した。NEIL1の発現が低い肌では、紫外線などで損傷を受けたDNAの修復が滞り、シミやシワなど複合的な肌悩みが生じやすくなると示唆された。同研究から、美しい肌を維持するためには、NEIL1をはじめとするDNA修復酵素の発現を高めることが重要であることが分かった。今後、この研究成果を肌の老化を総合的に予防・改善する化粧品開発に応用していくとしている。
一般的に、肌は加齢に伴って衰えていく。しかし、同年代でもシワが多い人や少ない人がいるように、肌性状は個々で異なる。同社は、この個人差を生み出す要因として、DNAの修復能力に着目した。人間のDNAは、紫外線や活性酸素などにより日々損傷を受けている。しかし通常は、DNA修復酵素により損傷箇所は速やかに修復される。今回、このDNA修復酵素と肌性状との関連について調査した。
その結果、DNA修復酵素の一種であるNEIL1の遺伝子発現量が低下した肌では、肌のメラニンの量が増加し明るさが低下すること、コラーゲンの量が減少しシワが深くなることが明らかになった。このことから、美しい肌を維持するためにはDNA修復酵素の発現が重要であることが分かり、DNA修復酵素を増やしてDNA修復能力を高めることで様々な肌悩みの改善につながると考えられた。
なお、同研究の成果は2025年7月4~5日にかけて東京で開催された第50回日本香粧品学会学術大会にて発表した。
年齢を重ねるにつれて、シミやシワといった肌悩みが現れやすくなる。しかし、同年代でも、シミやくすみ、シワの程度などの肌性状は個人によって大きな違いが見られる(図1)。

図1:同年代の肌の個人差(すべて46歳女性、代表例)
メナードは、個人差を生み出す要因を探るため、DNA修復酵素に着目した。DNAは我々の身体を構成するタンパク質を作り出すための設計図だ。肌においても、コラーゲンなど美肌に欠かせないタンパク質の産生に重要な役割を果たしている。しかし、DNAは紫外線や活性酸素などによって絶えず損傷を受けている。この損傷を修復するために、我々の身体の細胞にはDNAの損傷を修復する酵素が存在している。同社では、これまでの研究から、加齢によってDNA修復酵素が減少することを見いだしてきた。今回は、DNA修復酵素が肌性状とどのように関係しているかを詳細に調べた。
女性被験者14名(37~52歳)の顔面部を対象とし、テープストリップにて採取した角質細胞をもとにDNA修復酵素の一種であるNEIL1の遺伝子発現量を測定した(図2)。

図2:DNA修復酵素NEIL1の遺伝子発現量
また、同被験者の顔面部における肌性状の測定を行い、NEIL1との関連を解析した。その結果、NEIL1の遺伝子発現量が多いほど、メラニン量が少なく、肌の明度(L*値)が高くなっていた(図3)。さらに、肌内部のコラーゲン量が多く、シワの深さが浅くなっていることも確認できた(図4)。ほかにも、血色の良さや肌表面のなめらかさなど、様々な項目においてNEIL1の遺伝子発現量との関連がみられ、NEIL1の遺伝子発現量が多いほど美しい肌状態であることが分かった。

図3:DNA修復酵素とメラニン量・肌の明度との関連

図4:DNA修復酵素とコラーゲン量・シワの深さとの関連
この結果から、DNA修復酵素が多いと、損傷を受けたDNAが速やかに修復されるため、メラニンの過剰生成やコラーゲンの産生低下などが抑制されて美しい肌状態が維持できると推察された。