ロート製薬

「乳酸発酵ヒアルロン酸」の抗菌作用を発見

ロート製薬は、ロートグループ総合経営ビジョン2030である「Connect for Well-being」の実現に向け、女性の健康・フェムケアの研究を進めている。今回、女性の膣内フローラ(膣内に生息するさまざまな細菌の集まりのこと。雑菌の侵入や増殖を防ぐ自浄作用がある)に関する研究を進めた結果、乳酸球菌/ヒアルロン酸発酵液(ヒアルロン酸を基質として乳酸球菌〈Lactococcus〉により発酵させた後、ろ過して得られる液体。以下、乳酸発酵ヒアルロン酸)が選択的に抗菌作用をもつ可能性を明らかにした。

近年、デリケート部位に対する関心が高まっている。特に、膣のpHやプロバイオティクス(健康に良い影響を与える生きた菌のこと)など、膣環境をサポートする機能に着目した洗浄剤や保湿剤などの製品が注目を集めている。この背景には、膣内フローラに関する理解の深まりや、感染症・不快感への意識の向上、さらにはデリケート部位のセルフケアに対する認識の広がりがあると考えられる。

健康な膣内フローラは、細菌性膣炎(生活習慣やストレスなどの原因で膣内の細菌バランスが乱れることで発症する感染症。以下、BV)のような感染症の予防や、免疫力向上など女性の健康維持に重要な役割を果たす。特に、乳酸菌の一種であるLactobacillus crispatus(以下、L.crispatus)は、膣環境の維持と密接に関連しており、高い乳酸産生能力によって膣内を最適なpHに維持し、悪玉菌の増殖を抑制する。そのため、L.crispatusが膣内に定着し、優勢であることは健康な膣内フローラの特徴の一つと考えられる。一方で、Gardnerella vaginalis(以下、G.vaginalis)は嫌気性通性病原菌で悪玉菌の一つとして知られ、膣内フローラのバランスを崩すことでBVの主な原因となる。BVは、膣分泌物の悪臭、不快感、感染リスクの増加などの症状を引き起こし、膣環境に深刻な影響を与える可能性がある。

今回、ヒアルロン酸に関する幅広い研究の結果から、膣内フローラのバランスをサポートする成分として「乳酸発酵ヒアルロン酸」に着目した。本研究では、G.vaginalisおよびL.crispatusに対する作用を確認することとした。

乳酸発酵ヒアルロン酸とG. vaginalisを共培養したところ、乳酸発酵ヒアルロン酸は、0.0075%以上の濃度でG.vaginalisの増殖を有意に抑制した。さらに、G.vaginalisに対する抗菌作用は濃度依存的に強まることが確認された。

乳酸発酵ヒアルロン酸は濃度依存的にG.vaginalisの増殖を抑制した一方で、L.crispatusの増殖状態には有意な差は無く、顕著な増殖抑制効果は観察されなかった()。

L. crispatusに対する乳酸発酵ヒアルロン酸の増殖抑制効果(※)
※MIC(最小増殖阻止濃度)測定による

以上の結果から、乳酸発酵ヒアルロン酸はG.vaginalisに対して選択的に抗菌作用を示し、L.crispatusのような有益な菌には影響を与えない可能性があることが示唆された。このことは、乳酸発酵ヒアルロン酸が特定の細菌種にのみ作用する選択的なメカニズムを有する可能性を示唆している。