5月末、韓国ソウルに行った。相変わらず、明洞は外国人だらけで、日本語が耳に入ることも多い。ある化粧品関連企業を訪問すると、20代後半の女性が韓国トレンドについて解説してくれたのだが、「私たちの年代は、もうあまり整形しないんですよ」という一言に驚いた。40代以降で、頻繁に整形をしていた人たちは不自然な顔立ちになり、それをSNSで公開しながら、過度な整形への警鐘を鳴らしているという。そこから学びを得た若者は、コンプレックス解消のプチ整形を行い、あとは自分好みのメイクアップとスキンケアを楽しむ。「人は年を取る生き物だから、年齢に応じたその人らしい美を楽しむ。K-Beautyはスローエイジングがブームです」と前述の女性が語ったとき、少し複雑な気分になった。その美の概念は日本の化粧文化そのもの。しかし、それがK-Beautyの発信力でアジア、ASEANに伝わると、韓国の化粧文化として認知されるのだろうか。スローエイジングの需要が生まれれば、日本ブランドの追い風になるだろう。それでも日本らしい価値観はJ-Beautyとして世界に届けたい。日韓化粧品産業の得意分野の違いを感じつつ、韓国牛をビールで流し込んだ。
月刊『国際商業』2024年08月号掲載