花王とキリンホールディングスは2023年11月24日、都内で「花王とキリンによる内臓脂肪と免疫活性に関する共同研究成果発表会」を開催した。両社は、和歌山県立医科大学が主宰し、ヘルスプロモーション研究センター(HPRC)が取りまとめているコホート研究「わかやまヘルスプロモーションスタディ」に参画し、22年11月から、内臓脂肪と、免疫の司令塔(プラズマサイトイド樹状細胞〈pDC〉)の活性について、その関連を調査する研究を共同で実施してきた。共同で研究を進めてきた内臓脂肪とpDCの活性についての研究成果では、内臓脂肪が多いとpDC活性が低い(免疫機能が低い)こと、また、内臓脂肪が多く、かつpDC活性が低いと、新型コロナウイルス感染症・インフルエンザの罹患リスクが高いことを日本で初めて確認している。

発表会でキリンホールディングス執行役員ヘルスサイエンス事業本部ヘルスサイエンス研究所・藤原大介所長は、花王との共同研究について、「キリンは免疫ケア、花王さんは内臓脂肪研究、両社の強みを持ち合わせて技術の粋を結集したものが、今回の成果です」と説明。研究では新型コロナウイルス感染症の経過中に、プラセボ群でpDCが血中から減少したこと、pDCを活性化する乳酸菌L.ラクティス プラズマ群では維持されていたこと、そして内臓脂肪が多い人はpDC活性が低下していることなどを発表した。

引き続き、花王ヘルス&ウエルネス研究所大里直樹特定テーマリーダーが内臓脂肪面積とpDC活性が感染症罹患に及ぼす影響について説明した。それによると「内臓脂肪が高いとpDC活性が低下し、pDC活性が低い人は、高い人と比較して、5倍新型コロナウイルス感染症に罹患するリスクが高く、また内臓脂肪面積が高い人は、低い人と比較して、7倍新型コロナウイルスに罹患するリスクが高いことを見いだしました」と説明。つまりpDC活性や内臓脂肪が良くない状態にあると、新型コロナウイルスに罹患しやすいことを初めて解明している。

総括すると、内臓脂肪と免疫機能の両方をケアすることが感染症を予防する上で重要だということだ。

最後にテレビでおなじみの日本医科大学個別化教育推進部門・北村義浩部門長特任教授が今冬の感染症リスクと免疫対策について、「免疫力を上げるには、適切な食事と適切な運動で腸内環境を整え、筋力を付けることが大切です。結果、内臓脂肪を下げることにつながる。そして適切な腸内環境を守るためにも、必ず発酵食品、特に乳酸菌発酵食品を取り入れていただきたいなと思っております」と語り、最後を締めくくった。

月刊『国際商業』2024年02月号掲載