コーセーが社会貢献の取り組みのひとつとして支援している公益財団法人コーセーコスメトロジー研究財団は、2022年11月30日に「第33回 表彰・贈呈式」をパレスホテル東京にて開催した。

コーセーコスメトロジー研究財団は、多様かつ広範な学際領域に跨るコスメトロジー(化粧品学)に関する研究へ助成を行うことにより、広く生活者の保健衛生の向上を図り、美しく豊かな人間生活の実現に寄与することを目的として、1990年に株式会社コーセーの創業者である小林孝三郎により設立された。以来毎年、化粧品に関連する幅広い学術分野の優れた研究に対して助成を行っている。

第33回となる今年度は「コーセーコスメトロジー奨励賞」として、2018年以降の助成採択者の中から北海道大学大学院 薬学研究院 木原章雄 氏を表彰した。また、「コスメトロジー研究助成」として、全国の主要大学、病院、公的研究機関からの110件の応募に対し、選考委員の厳正な審査により選ばれた30名の研究者に対して助成金贈呈を行った。

■小林一俊理事長挨拶 要旨
本日、当財団は、33回目の表彰・贈呈式を迎えることになりました。当財団は、生涯現役として“化粧品ひとすじ”に歩んできた小林孝三郎が、化粧品業界への感謝の思いから、平成2年に設立したもので、これまでに幅広い分野の研究者への支援を通して、コスメトロジーの発展につとめてまいりました。今年までの累計助成件数は913件、総額は12億7,500万円に上ります。本日は、「コーセーコスメトロジー奨励賞」の受賞者1名を表彰し、「コスメトロジー研究助成」30名の研究者に贈呈書を授与させていただきます。皆さんには、本日の受賞をきっかけに、コスメトロジー分野の研究で実りある成果をだされることを願ってやみません。これからも当財団は、コスメトロジーへの研究助成を通して、人々の美しく豊かな生活の実現と化粧品産業の発展のため、着実に歩みを進めてまいります。

■二木鋭雄選考委員会委員長 選考経過報告 要旨
今年はコスメトロジー研究助成に110件の応募をいただきました。例年どおり「素材・物性」、「生体作用・安全性」、「精神・文化」の三分野で助成課題を募集し、各分野の専門委員による研究課題の総合評価に加え、(1)独創性、(2)発展性、(3)実用の可能性、(4)コスメトロジーへの波及性の観点から予備選考を行い、選考委員会での慎重な審議の結果、30件の研究課題を採択しました。今年は、皮膚で生理活性機能を持つ成分の開発や、皮膚の老化メカニズムの解明、人の「顔」を研究対象にしたものなど、コスメトロジーならではのユニークな着想による、コスメトロジーの広がりが感じられる、これからの展開が大変楽しみな研究課題が多く採択されました。本日の受賞される研究が、当初の目標を達成され、将来、人々の健康と生活の向上に役立つことを祈ります。

■ 2022年度 コーセーコスメトロジー研究財団 表彰・助成実績
○コーセーコスメトロジー奨励賞
表彰候補者(2018年以降の研究助成採択者)28 名
受賞者 1 名
表彰内容:表彰状および副賞 200万円
○ コスメトロジー研究助成
応募総数 110 件
助成件数

1)素材、物性に関する分野 10 件
2)生体作用、安全性に関する分野 15 件
3)精神、文化に関する分野 5 件

計 30 件

助成金総額 5500万円(1件あたりの助成金額200万円、100万円、50万円)
○ 国際交流支援助成 2 件
○ 学術集会支援助成  5 件

◇2022年度 コーセーコスメトロジー奨励賞 受賞者(敬称略)
<順に、所属機関・氏名・研究課題>
■北海道大学大学院 薬学研究院
木原章雄
シルCoA合成酵素ACSVL4 による皮膚バリア形成機構(2018年 第29回コスメトロジー研究助成受賞)

◇2022年度 コスメトロジー研究助成 受賞者(敬称略、分野別五十音順)
【第1分野: 素材、物性に関する分野】
<順に、所属機関・氏名・研究課題>
■早稲田大学理工学術院 先進理工学部 梅野太輔
進化分子工学によるデザイナー炭化水素生合成経路の開発
■京都大学 iPS細胞研究所 小田裕香子
皮膚バリア機能を促進する新規生理活性ペプチドの開発
■岐阜大学 工学部 小林信介
化粧品微粒子原料表面改質のための気流層型プラズマリアクターの開発
■慶應義塾大学理工学部 高橋大介
糖脂質型バイオサーファクタントの精密化学合成と構造機能相関による新規高機能性化粧品素材の創製
■東北大学大学院理学研究科 高橋まさえ
テラヘルツ分光による水和水の環境の分子レベルでの解明
■富山県立大学工学部  竹井敏
ガス透過性金型による1㎠当たり100万本以上の高溶解型無痛ナノマイクロニードルの開発
■慶應義塾大学薬学部 長瀬健一
肌温度感受性を有する細胞増殖因子送達ナノ粒子の開発
■山陽小野田市立山口 東京理科大学工学部 中道友
微小血管系の多機能イメージングによる皮膚特性・機能の評価
■広島大学大学院 先進理工系科学研究科 松原弘樹
界面活性剤吸着膜の相転移を応用したピッカリングエマルションの自発解乳化
■中部大学先端研究センター 山本尚
ペプチドの革新的合成

【第2分野: 生体作用、安全性に関する分野】
<順に、所属機関・氏名・研究課題>
■京都大学iPS細胞研究所 池谷真
iPS細胞由来顔面部真皮幹細胞誘導法の開発
■大阪大学微生物病研究所 石谷太
小型魚類を活用した皮膚老化機構の解明と抗老化因子の探索
■千葉大学大学院薬学研究院 伊藤晃成
HLA多型の関わる接触性皮膚炎リスク評価系の基盤構築
■和歌山県立医科大学薬学部 岩尾康範
優れた安全性・安定性を有する経皮吸収型イオン液体の創製とコスメトロジー素材への応用
■神戸大学バイオシグナル 総合研究センター 上山健彦
メラニン合成関連酵素のパルミトイル化による可逆性の皮膚色制御
■公益財団法人かずさDNA研究所 遠藤裕介
かゆみを引き起こすpathogenic codeの同定と治療基盤の開発
■京都大学大学院生命科学研究科 神戸大朋
チロシナーゼ酵素群の活性化に不可欠な金属獲得の分子機序の解明
■熊本大学国際先端医学研究機構 佐田亜衣子
皮膚幹細胞の糖鎖をターゲットとした老化制御に向けての基盤研究
■「香川大学医学部 大日輝記
表皮のペプチドによるバリア制御機構
■京都大学医生物学研究所 豊島文子
妊娠期における皮膚リモデリング機構の解析
■東京理科大学理工学部 中村由和
表皮細胞老化において細胞膜リン脂質の果たす役割の解明
■宮崎大学医学部 西山功一
加齢による微小血管網異常と皮膚老化の関係性を解く
■徳島大学ポストLED フォトニクス研究所 長谷栄治
全光学的手法を用いた老化皮膚における力学特性変化の解析
■公益財団法人 東京都医学総合研究所 平林哲也
表皮バリア脂質の代謝異常が炎症を惹起する機序の解明
■同志社大学生命医科学部 和久剛
転写因子Nrf3を標的としたシミ予防研究へのHIV-1 プロテアーゼ阻害剤リポジショニング

【第3分野: 精神、文化に関する分野】
<順に、所属機関・氏名・研究課題>
■福岡医療短期大学歯科衛生学科 泉喜和子
表情シワを用いた新たな顔貌定量法(顔貌解析アルゴリズム)の開発
■神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科 和泉慎太郎
化粧品の機能性を最大化する塗布動作の定量評価と提示方法の研究
■早稲田大学スポーツ科学学術院   林直亨
顔面の皮膚血流に及ぼす加齢と運動習慣の影響
■同志社大学社会学部社会学科 藤本昌代
コスメティック産業集積地発展における社会構造、多様なアクターの協働、支援制度に関する分析
■奈良女子大学研究院 生活環境科学系 横山ちひろ
顔形態の社会的シグナルとしての役割