2020年12月15日、英国で従来より感染力がずっと強いとされる新型コロナウイルス変異種が特定され、爆発的な感染急増が報告された。すぐさま欧州をはじめとする40あまりの国が英国からの入国停止措置を打ち出した(現在は50カ国にのぼる)。フランスもクリスマスが迫る20日夜半より、英国からの人と貨物の渡航を 一旦すべて停止。英国と欧州間の最も主要な物流ルートの一つ、イングランド南東部にあるドーバー港と仏・カレー港をつなぐフェリーも臨時運休となった。このため、欧州側から英国に物資を運んで戻ることができなくなった貨物トラックが数千台も足止めされ、高速道路にまで及ぶ長蛇の列を作ることになってしまった。地元の自治体は急きょ、使用されていない空港を臨時の待機駐車場として解放した。折しも、「通商条約なきままのEU離脱」への不安が高まっていたことと相まって、物流の大混乱が危惧される事態となった。

貨物トラックの運転手はほとんどが東欧人で、英語とフランス語のみで伝えられる出航停止事情のアナウンスを理解できない人も多く、混乱が生じた。ターミナル運営会社や行政からの支援は翌朝までほとんど行われずじまいだった。女性運転手などは公衆トイレを探すためにトラックを路肩に止めて何十分も歩くことになり、車に戻ってみたら事情を知らなかった役所によって駐車違反の紙が貼られていたという笑えない話もあったという。深夜には州警察の要請で近隣の宗教団体が炊き出しを行い、800食ほど配ったもののまったく足りなかった。付近にはコンビニなどもないため、水すら口にできずに最初の夜を明かした運転手や同乗者が少なくなかった。臨時駐車場になった空港では翌日になってやっと、仮設トイレと無料で温かい食事を提供するテントが設営されている。

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