46歳にして、初めて骨を折った。右手はどうされたんですか、と人に会うたびに聞かれる。「子どもと遊んでいて、ベッドのフレームにぶつけた」と簡潔に答えているが、ほんとうの理由はちょっと違う。二人の子どもの寝かしつけをしていた。もうちょっとで寝る! というところで、ガチャっと玄関が開き、子どもたちはベッドループを飛び出していった。やり直し――と投げやりになり、薄暗い部屋でベッドに倒れたら、手をぶつけた。いつ何時も投げやりはいけないと猛省した。だが、ギブス生活にも学びはある。箸が持てないので、フォークを愛用しているが、和食の味が微妙に違う。特に刺身にフォークを刺して口に運ぶのは味気ない。茶碗に付いた米粒がつぶれるのもストレスだ。日本人に染み付いた所作には意味がある、と再認識。肌に触れるスキンケアも所作の一つであろう。ありふれた日常生活への感謝が強くなった。娘が11月に7歳になった。お約束(特に毎日の公文とピアノ)を守った子どもにサンタさんが来る。母娘のありふれた会話だが、娘は「自信ある!」ときっぱり。ほんとうに? 大掃除や冬至に正月準備。日本らしいイベントがある師走を大切に過ごしたい。

月刊『国際商業』2026年01月号掲載