日本メナード化粧品は、食品にも使用される「ショ糖脂肪酸エステル」を用いて、セラミドを内包するディスク状のベシクル(両親媒性の脂質や合成界面活性剤の二分子膜からなる小胞体のこと。脂質小胞体とも呼ばれる)を作製する独自の技術を開発した。この技術により、化粧品への安定的な配合が難しかったセラミドを安定的に配合できるようになった。さらに、ベシクルの粒子サイズを制御することで、透明な製剤やパール光沢をもつ製剤が作製できることも確認された。
ショ糖脂肪酸エステルは安全性が高く、有効成分の肌への浸透を促進する機能を持つことでも注目されている成分だ。同技術により、様々な見た目を実現できるだけでなく、セラミドの安定的な配合と高浸透性も備えた画期的なセラミド配合化粧品の開発が可能になると期待される。
なお、同研究の成果は2025年9月22~25日に千葉大学で開催の「第76回コロイドおよび界面化学討論会」にて発表予定である。
セラミドは、肌のバリア機能を担う「細胞間脂質」の主要成分であり、乾燥や肌荒れから肌を守るうえで不可欠だ。しかし、セラミドは結晶性が非常に高く、化粧品(特に透明な製品)に安定的に配合することが難しい成分だった。また、肌へ効率よく浸透させることも長年の課題となっていた。
メナードは今回、植物由来の界面活性剤「ショ糖脂肪酸エステル」とセラミドを組み合わせることで、透明で安定性が高い独自のセラミド配合製剤の開発に成功した。また、この製剤は非常に小さなディスク状粒子(ディスク状セラミドベシクル)の分散物であることも分かった。さらに、同時に配合する保湿剤などの種類や量を調整することで、粒子サイズを制御できることも判明し、粒子サイズを大きくすることで美しいパール光沢を持つ製剤の調製も可能になった。
セラミドは化粧品の成分としてよく知られているが、結晶性が非常に高く、化粧品に配合するのが難しい成分でもある。メナードはこのセラミドを安定的に、様々な製剤へ配合するための技術開発を進めてきた。
今回、開発に成功した製剤を詳細に分析すると、セラミドを内包するディスク状のベシクル(ディスク状セラミドベシクル)が形成されていることが明らかになった。
さらに、同時に配合する保湿剤などの種類と量を調整することで、ベシクルの粒子サイズを制御でき、透明な製剤だけでなくパール光沢を持った製剤も作製できることが分かった。粒子が小さい場合は光が透過するため透明に見えるが、粒子が大きくなると光が反射し、粒子ごとの反射光が干渉し合うことでパール光沢が生じると考えられる。

開発したセラミド製剤とディスク状セラミドベシクル

透明タイプおよびパール光沢タイプのディスク状セラミドベシクルのイメージ
今回開発した透明なディスク状ベシクル製剤にオイル成分を加えると、粒子形状はオイルを内包した球状へと変化する一方で、透明な外観は維持されることを確認した。同技術に用いるショ糖脂肪酸エステルは、有効成分の肌への浸透を促す効果を持つため、セラミドだけでなく、肌に有効なオイル成分も効率よく浸透させる製剤の開発が可能になると期待される。これにより、より多角的なアプローチで肌悩みに応える商品開発が実現できると考えられる。

オイル成分を配合しない場合(左側)とオイル成分を配合した場合(右側)
今回開発した技術によって、これまでにない多様なセラミド配合製剤の実現が可能になった。さらに、ショ糖脂肪酸エステルの使用によって安全性と高い浸透性を兼ね備えた製剤の開発が期待される。今後は同技術を活用し、お客様のニーズに応える独創的な商品の創出に取り組んでいくとしている。