花王ヘアケア研究所・解析科学研究所は、水の中に多量の油を乳化させた高内相比型エマルジョンを安定的につくり出す技術を構築し、力を加えるとやわらかくとろけるゲル状のヘアオイル製剤を開発した。このオイルゲルは、見た目や感触のユニークさに加えて、水溶性の機能性成分を安定して配合することも可能だ。

花王は、この技術を展開することで、ヘアケア・ヘアスタイリング市場において、これまでの常識にとらわれない新たな価値をつくり出すことを目指す。

今回の研究成果は、2025年9月3~5日に長野県にて開催の第63回日本油化学会年会で発表した。

ヘアケア・ヘアスタイリング市場では、手軽に使えて効果を実感しやすいことからヘアオイルが多くの人に支持されており、数多くの商品が販売されている。その中で花王は、見た目や感触、機能において新規性のあるユニークなヘアオイルを提案することを目指し、ゲル状のオイル(オイルゲル)の開発を進めてきた。

オイルゲルをつくる方法のひとつに、ポリマーで油の中にネットワーク構造を形成する手法があるが、ポリマーの溶解に加熱が必要なため、油の引火性から工業生産には適していない。加熱しない方法としては、水の中に多量の油を乳化させた高内相比型エマルジョンを利用する手法があるが、時間が経つと油滴同士がまとまってしまい、エマルジョンが不安定になりやすいという課題がある。そのため、従来は安定化させるための成分を多量に加えていたが、この成分は髪に塗布したときにベタつきやすいという欠点があった。

そこで花王は、ベタつきの原因となる成分を使用せずに、高内相比型エマルジョンを安定的につくる技術開発に取り組んだ。そしてその技術を応用した見た目や感触、機能のユニークなオイルゲルの開発に挑戦した。

今回花王は、油滴同士がまとまって高内相比型エマルジョンが不安定になることを防ぐために、精密界面制御の知見から、同じ電気同士は反発するという性質を利用することを試みた。プラスの電気を持つ成分を水の中で油滴の表面部分にとどまるように工夫した結果、エマルジョンを安定化させることが可能になり、ベタつかない快適なオイルゲルをつくることに成功した(図1)。

このオイルゲルは、手に取ったときはゲル状で、力を加えるとやわらかくとろける独特の感触を持つ。また、油と水が入っているという特徴から、油溶性成分と水溶性成分の両方を配合することができ、新しい価値を提供できるようになることが期待される。