ディーエイチシー(以下、DHC)は、“若返りの秘薬”と称される成分「プラセンタエキス」の効果を科学的に立証するため、約8年間にわたり研究を重ねてきた。その結果、DHCは「プラセンタエキス」に皮膚の若返りに役立つ有効成分があることを発見し、2025年3月8日の日本農芸化学会において、「プラセンタエキス」の若返り効果を発表した。なお、本研究が自然科学および臨床研究のあらゆる領域を対象とした世界最大級の学術誌『Scientific Reports』にて、“プラセンタエキスの新しい生物学的活性を報告した最初の研究”と掲載された。
同社は、「プラセンタエキス」の若返り効果を科学的に立証したことにより、これからも安全・安心で、品質にこだわった商品とサービスを提供するため、美容と健康の分野に革新をもたらす研究を続けていくとしている。
プラセンタエキスは、主にブタ等哺乳類の胎盤から抽出した成分のことで、肌にハリと弾力を与える効果、肌の保湿力アップ、美白効果、しみ予防、抗酸化作用などのほか、疲労回復、更年期障害の改善にも期待できる。
■発表名
「豚胎盤抽出物は、ヒト表皮細胞の細胞内NADレベルを高める」
■研究期間
14年6月~22年11月
■研究背景
プラセンタエキスは、古くから“若返りの秘薬”として知られ、肌の保湿や弾力性向上などの効果から、化粧品や健康食品に広く使用されている。しかしながら、これまで科学的な効果は解明されていなかった。そこで同社は、プラセンタエキスの効果のメカニズムを明らかにするための研究を行った。

細胞培養試験の様子
■研究結果
①NAD増強効果の発見
NADとは「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」のことで、細胞のエネルギー生産やさまざまな生命活動に不可欠な補酵素である。
プラセンタエキスは、ヒト表皮細胞の細胞内NADレベルを濃度依存的に増加させた。また、プラセンタによる処理からわずか4時間後に、細胞内NADレベルの大幅な上昇が観察された。この結果により、プラセンタエキスは表皮細胞の細胞内NAD量を高めることでエネルギー産生を増強させる可能性が示唆された。この結果により、皮膚の若返りに役立つ成分であることが明らかになった。しかし、加齢とともにNADの量は減少し、健康問題を引き起こす可能性がある。そのため、体内のNADを適切に保つことが、健康的に歳を重ねるために重要だ。

左:細胞内NADレベルとプラセンタ濃度 右:細胞内NADレベルと処理時間
② 低分子成分の重要性/③皮膚への高親和性の可能性
半透膜を用いた液体中の溶質を分離する膜分離技術「限外ろ過」を使った予備検討により、上記の効果を持つプラセンタの有効成分が3kDa未満の低分子を含む画分に含まれていることが分かった。そこで、その画分をさらに逆相HPLC(高速液体クロマトグラフィーの一種で、主に疎水性の違いを利用して成分を分離する方法)を使って12の画分に分離し、唯一活性が見られた3の画分をLC-MS/MS(主に化学物質や生体試料の測定に用いられる高度な分析技術)を使って解析した結果、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド。ビタミンB3の一種で、NADの前駆体として機能する成分)やNR(ニコチンアミドリボシド。ビタミンB3の一種で、NADの前駆体として機能する成分)が含まれていることが分かった。このことから、プラセンタに含まれているNMNやNRは皮脂への親和性が高く、プラセンタエキスは細胞内のNADレベルを高める有効成分である可能性が示唆された。

左:逆相HPLCを使い12の画分に分離
右:LC-MS/MSを使い解析した結果
この研究成果は、プラセンタエキスが細胞内NADを高めることで皮膚の若返りに役立つ成分であることを示唆している。低分子であるため、肌に吸収されやすく、小腸からもそのまま吸収される。そのため、製剤上の品質管理の向上や、より最適な提供方法が可能だ。同社は今回の研究成果を元に、皮膚のNADに着目した新たなアプローチの提案を目指していくとしている。