久しぶりに家族旅行をした。訪問先はともかく、5歳児と1歳児を連れての旅は、前夜からバタバタ。親の準備まで気が回らず、国内旅行だから足りないものは現地調達という緩い気持ちで出発となった。案の定、妻は化粧品を忘れた。せっかくなので、旅先の化粧品専門店に足を運ぶと、子育てに奔走する妻にとっては、これも久しぶりのカウンセリングを受ける機会。子ども二人は私が預かり、ゆっくりかつ丁寧に接客を受けると、そこそこ値が張るクッションファンデと下地を購入した。専門店のスタッフの話を聞き、質問して、塗ってもらって、とずいぶん楽しかったようで、「やっぱり、こういう買い方が好き」と破顔。職業病なのか、私の方はチラチラと推奨する商品を見て、あのブランドはちょっと失速気味だから、上手に売り込んでいるな、と店の販売力を調査。きちんと購入までもっていくのだから、化粧品専門店の売る力は侮れない。妻はお店を気に入ったが遠くて通える場所ではない。こんなお客にはデジタルも選択肢に入るだろうが、リアルの売り場を好む妻は興味を示さない。会話、接客、香り、感触――。まだデジタルでは補いきれない多様な要素がある化粧品からリアルの売り場が消えることはないだろう。だからこそ、ECを含むデジタル活用に恐れず、突き進めば良いと思う。

月刊『国際商業』2024年09月号掲載