小林製薬の自主回収を契機に、サプリメント需要が冷え込んでいる。消費者心理を考えれば、仕方がないことだろう。大手ドラッグストア幹部によると、小林製薬のサプリメントの売り上げが減るのは想定内。生活習慣などによる肥満症を改善する医薬品「ナイシトール」も売れ行きが鈍化しているが、これも想定内。ただ、化粧品や消臭芳香剤、汚れ付着防止成分のコート効果で便器をきれいに保つ「ブルーレットおくだけ」などの商品群は、相変わらず売れ続けており、「消費者の支持は失っていない」と言う。これだけ報道が過熱し、国会の質疑に取り上げられたのに、小林製薬はブランド力を保っている。この点には大いに学びがある。日頃からコーポレートブランド、プロダクトブランドを磨き続ける企業は、ピンチを迎えても消費者の支持が根強く残る。だから起死回生の機会が生まれる。小林製薬の問題は原因究明に時間を要することから、対応を打とうにも我慢の時期を過ごすしかない。原因が明らかになった後の対応策を練る時間にも成り得る。小林製薬の次のアクションを落ち着いて待ちたいと思う。

月刊『国際商業』2024年06月号掲載