溝呂木健一(みぞろぎ・けんいち)
化粧品会社にて販売会社、海外駐在、商品開発担当、ブランドマネージャー、部門長を歴任。退社後は平成国際大学にて教授、学部長、副学長を歴任。専門科目はマーケティング論、企業論、経営学。現在は同大学名誉教授、経営コンサルタント、日本語教師。著書に『会社員から大学教授になった父が』(風詠社)、『日本の心がマーケティングを超える』(共著・税務経理協会)
コモディティからブランドへ
「こんなに高い値段で売りやがって!」と、朝日酒造(新潟県長岡市)の平澤修社長(当時)は怒りを吐き出すようにつぶやいた。「いいじゃない。定価より高く売っているんだから」と私。「いや、だいたいここに置いてあるのがいかんよ」と、空港のお土産店でのやり取りだ。2006年当時の話だ。
商品は日本酒の「久保田」ブランドだ。久保田は平澤が開発からマーケティングを築き上げたブランドだ。私が当時いた化粧品会社のブランドは横流れすると割引されて売られていた。横流れして高くなるのは、メーカー希望価格で買われたものである可能性が高い。転売されるのは防ぎ難い。それでも、転売の匂いのする客には売ってほしくないという平澤の信念だ。
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