東京都のスタートアップ支援事業「TIB CATAPULT(ティーアイビー・カタパルト)」で、美容・ウェルネス領域のクラスターが初めて採択された。アイスタイルを代表事業者とする「J-BEAUTY & BEAUTYTECH GLOBAL GATEWAY」が、化粧品メーカーやOEM・ODM、VC、アクセラレーター、小売り、海外進出支援など異なる機能を持つ企業を束ね、日本の美容産業が抱える事業化とグローバル展開の壁を取り払う。3年間の事業を通じ、支援終了後もスタートアップを継続的に世界へ送り出せるエコシステムの構築を目指す。

「J-BEAUTY & BEAUTYTECH GLOBAL GATEWAY」のメンバーたち
9月29日のキックオフイベントに登壇したアイスタイル「BeautyTech.jp」編集長の矢野貴久子氏は、KビューティーやCビューティーが存在感を高める現状に触れ、日本の美容産業が輸出で後れを取っているとの認識を示した。一方、世界では美容、ウェルネスともに市場が拡大しており、日本企業にも成長余地は大きいとみる。
国内でもJ-Beautyの競争力強化に向けた動きが本格化している。経済産業省は「化粧品産業競争力強化検討会」を設置し、2026年6月に中間報告書をまとめるなど、日本の魅力を海外につなげる取り組みを進めている。矢野氏はこうした動きを踏まえながら、「我々はその先を歩きたい」と強調。国による取り組みが進む中、民間の力を結集し、東京都とともに具体的な支援の仕組みを先行してつくる考えを示した。
背景にあるのは、日本発のスタートアップが優れた技術や素材を持ちながら、それを製品化や事業成長、海外展開まで十分につなげ切れていないという問題意識だ。独自技術や素材があっても、製品化には処方開発や製造の壁があり、その先にもマーケティング、規制対応、販路開拓、資金調達など多くのハードルが待ち受ける。
矢野氏は「韓国や中国がやれているところで、我々がやれていないところがあります。切れ目のない支援です」と指摘する。技術や素材から製品を生み出し、生活者に届け、さらに事業として成長させるまでを一貫して支える仕組みが必要だとの考えだ。
その受け皿となるのが「J-BEAUTY & BEAUTYTECH GLOBAL GATEWAY」だ。アイスタイルを代表事業者に、資生堂、ポーラ・オルビスホールディングス、マンダム、アンズコーポレーション、ビューティガレージ、AnyMind Group、NOVARCA、シロク、米ATOUT Partners、米igniteXL Venturesが参画する。大手化粧品メーカーから製造、小売り、VC、アクセラレーター、海外進出支援まで11社がそれぞれの知見やネットワークを持ち寄り、スタートアップの成長段階に応じた支援につなげる。
支援対象は化粧品に限定しない。美容とウェルネス、ヘルスケア、ファッション、美容機器などの境界が曖昧になる中、それらを横断して生まれる技術やサービスも視野に入れる。世界的に関心が高まる「ロンジェビティ」もその一つだ。日本の美容が培ってきた内外美容などの考え方は、長い人生を健康に、自分らしく生きることを支えるロンジェビティの潮流とも親和性があるとみる。
具体的には、地域由来の素材や独自技術を持つ企業が製品化を目指す場合、クラスター内の企業がそれぞれの強みを持ち寄り、開発から市場投入、海外展開まで伴走する。大手美容企業が抱える課題にスタートアップの技術や素材を組み合わせ、新たな製品やサービスにつなげる協業も想定する。
目指すのは単発の実証や製品化ではない。3年間で20件以上の協働成果を創出することを掲げ、スタートアップと参画企業の連携を具体的な事業へとつなげていく。矢野氏は、個々の案件に伴走しながら「3年後には皆さんに知っていただけるようなブランド」「海外で継続販売ができているブランド」を生み出したいとの考えを示した。事業期間中の成果創出にとどまらず、その後も新たなスタートアップを育て、世界へ送り出せる仕組みを美容業界に根付かせられるかが焦点になる。
TIB CATAPULTとは

26年度に採択されたクラスターのメンバー
東京都が2024年度から展開する、グローバルイノベーションに挑戦するクラスター創成事業。大企業や大学、VCなど多様なプレイヤーが持つ技術、資金、施設、ネットワークなどを持ち寄って「イノベーションクラスター」を形成し、スタートアップとの協働を通じてグローバルに活躍する企業の育成を目指す。スタートアップとの連携を実証にとどめず、具体的な事業成果につなげることを重視する。東京都は毎年6クラスターを採択し、KPIの達成状況や取り組み全体の成果に応じ、1クラスター当たり3カ年度合計で最大3億円の協定金を支払う。さらに6クラスターのうち1者を「グローバル推進クラスター」に選定し、最大3億円を加算する。26年度は美容・ウェルネスのほか、マテリアル、観光、宇宙、ディープテック、プラネタリーヘルスの6領域を新たに採択した。






















