8月19日、アットコスメストア アミュエスト博多店の内覧会に足を運んだ。メディアツアーは13時に始まったが、小一時間経った頃、アイスタイルの遠藤宗社長が到着していることに気がついた。しかし、表情は険しい。何かと思えば、照明の色・温度、MD、レジ周りなど、もうちょっと工夫できることを矢継ぎ早に指摘していた。店内を歩き回る姿は17時頃まで続いた。「もう少しこだわれるのに」という遠藤社長の言葉が耳に残る。翌朝10時、オープンを見に行くと、同社の本橋未来執行役員が端的な言葉で指示を出していた。こちらも「もう一工夫できたはず」と一言。リテール事業トップ2の貪欲な姿勢に現場の空気はピリッとした。しかし「今日から改善できる」「札幌の新店はまだやれることはないか」と会話が飛び交う。「札幌も観に来て。絶対、いい店にするから」と声をかけてくる社員もいた。アットコスメストアが元気なのは、一瞬で通り過ぎる勝負どころでスイッチが入るからだ。そこに役職の壁がないことも記しておきたい。「お客さまの回遊性はいい。博多は失敗ではないが、反省点を札幌でどう生かすか。そうやって人材が育てばいい」と話す遠藤社長の目は、いつものように柔らかくなっていた。

月刊『国際商業』2024年10月号掲載