4月に引っ越すことになった。転職や転勤ではなく、家族が増え、子どもの成長に伴い、手狭になったからだ。この春から年長になる娘のことを考え、新居は近くに買った。それでも最寄り駅から反対方向に歩くので、日々の生活は大きく変わる。ほとんどの家具は使いまわすとはいえ、カーテンや照明を選ぶ時間はワクワクする。身近な店も変わる。駅から遠いのに、人気のハンバーガー店がある。なかなかの高価格だが、暖かくなったら家族と公園で食べようと思う。仕事の合間を縫って、新居の訪問や引っ越し準備を行うのはたいへんだったが、それを通じて、何気ない日常生活を彩るものに、これほど価値があるのかと改めて実感できた。だから小林製薬が製造する紅麹原料の事態は残念でならない。厚生労働省が廃棄を命じた同社の3品は、少しでも健やかに日々を過ごすことを願って買っていたもの。生活者視点のモノづくりを徹底する同社だからこそ、その意識を紅麹原料の対応に生かしてもらいたい。

月刊『国際商業』2024年05月号掲載