化粧品ブランドサイトの多言語化が進んでいる。2020年7月、オルビスは自社ECサイトを日本語以外にも英語、簡体字、繁体字の三つの言語で表示できるように刷新。海外ユーザーへの情報発信力を強化し、自社ブランドのグローバル展開をさらに進める姿勢を見せた。

7月30日に銀座にオープンしたブランドSHISEIDOの旗艦店「SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE」のウェブサイトも同様の3言語を選択できるよう整備されている。

これらのサイトに用いられているのが、Wovn Technologies社の「WOVN.io」というWeb サイト多言語化ソリューションだ。

同社は「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」をミッションに掲げ、交通や金融、飲食、エンターテイメントなどさまざまな業界にWeb サイト多言語化ソリューションを提供。現在1万5000サイト以上への導入実績を持っている他、外国人向けのガイドブック作成や統計調査など、外国人が過ごしやすい環境作りのため幅広い分野で貢献している。

上森久之副社長兼COOは「日本は地理的に海外に商品を売るというノウハウやマインド、実績がある。さらに、在留外国人も300万人と、日本国内に住む外国人もここ数年で増えてきている。そのような状況の中、大手企業さんからの相談も増えて、大手向けの多言語化プラットフォームの構築に至っています」と、ここまでの事業拡大の背景について説明する。

WOVN.ioが幅広く使用されている理由は、システムの使いやすさに他ならない。

もともと、創業者である林鷹治社長兼CEOが自身のネットショップを英語に対応させるためにプログラミングをしていたことが同システムの開発のきっかけだ。従来であればほとんどもう一つ別サイトをつくる程の手間が必要になるところを、Javaスクリプトでページ表示のみを切り替える技術を言語に応用。ページ内の文章のみをスクレイピングして、他の言語に変換して同じところにピンポイントで戻すという技術を開発した。これにより、だれもが簡単に、正確に望んだ通りの訳を付けることを可能にした。

多言語化されたオルビスのECサイト

翻訳先の言語は全41言語をそろえており、世界人口の約80%の言語をカバーできる計算。難しい固有名詞への対応も十分だ。ウェブサイト全体にあるテキストを解析し、自然言語処理で文章を構造化、固有名詞だけをリストアップ。そのリストアップされた商品名や成分名ごとに、ブランド側が自分で対訳を設定することができる。また、作成した訳は用語集として一元管理されるため、ブランド内で自動的に統一される仕組みだ。

SEOのための単語翻訳、画像の置き換えなどにも対応。またリンクURLも表示言語ごとに変えられるため、たとえば中国語でアクセスした人には、Twitterではなくウェイボーにつながるなどの細かな配慮がWOVN.io上で行える。

また、このプラットフォームを使用することで、ウェブサイト閲覧者が現在実装言語以外にどのような言語を使用しているかなどのデータ解析もできる。サイトの翻訳だけでなく、次なる進出国や強化する国など、ブランドの展開にも役立てる情報を提供できるのが強みだ。

上森副社長は「当初想定したよりも業種が多岐にわたっていますが、そのなかでも、小売、とりわけ美容関係というのは重要なファクターになっている」と同サービスの化粧品業界での更なる利用拡大に意欲を示す。各国で徐々に回復の動きはあるものの、いまだコロナ禍によって海外への移動が大きく制限されている昨今。海外人気も高い日本の化粧品ブランドがサイトのグローバル対応を強化することは、海外のブランドユーザーに対する重要なアプローチの一つといえるだろう。