世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本における研究開発部門であるロレアル リサーチ&イノベーション ジャパンのエバリュエーション・インテリジェンスチームはハイパー・スペクトラル・イメージャー(HSI)を用いて日光性色素斑と炎症後色素斑の違いを研究し、その結果を国際的な化粧品関連学術誌であるインターナショナル・コスメティック・サイエンスに発表した。
太陽光を浴びることによって生じる日光性色素斑とニキビや創傷などが原因で起こる炎症後色素沈着は、皮膚の色素沈着の中でも多くみられる障害で、その診断は今日では熟練した皮膚科医によって行われている。今回、エバリュエーション・インテリジェンスチームは理化学研究所と共同開発したHSIを用いて、この二つの色素沈着の違いを検討した。
被験者は日本人女性11名で、皮膚科医による診断により全員が左右両頬にそれぞれ一つの日光性色素斑(solar lentigo)を有していた。このうち5名の被験者はまた、左右両頬にそれぞれ一つの炎症後色素沈着(PIH)も有していた。HISスペクトル測定は、液晶可変フィルターを備えたスペクトル走査型分光計を用いて行い、それぞれの色素沈着の差分反射スペクトル、デルタ(Δ)、を対応する被験者の皮膚色を基準として取得した。測定項目は皮膚の明るさ(ΔL*)、赤み(Δa*)、黄み(Δb*)、およびメラニン量(ΔMel)、酸化型ヘモグロビン量(ΔOH)、非酸化型へモグロビン量(ΔDOH)だ。
それぞれの色素斑の反射スペクトルを分析した結果、炎症後色素沈着は日光性色素斑に比べて、ヘモグロビン(ΔOHおよびΔDOH)の含有量が高く、また赤み(Δa*)が強く、黄み(Δb*)が弱いことが分かった(図参照)。
これは、炎症後色素沈着部位における血流増加に起因すると考えられる。炎症は通常、治癒過程における炎症部位の細動脈の拡張と血流増加によって引き起こされる発赤を伴うので、上記の測色学的HSI測定結果は、炎症後色素沈着に関連する基礎的な生化学反応を反映している可能性がある。
同パイロット研究により、炎症後色素沈着は日光性色素斑と比較して、ΔOHおよびΔDOH含量が高く、Δa*値が高い一方で、Δb*値が低いことが統計的に示された。これらの予備的な知見を強化するためには、より大規模なコホートを対象とした追加の臨床研究を実施する必要があるが、HSIは皮膚科医によるこれら皮膚疾患の正確な臨床診断を支援する有効なツールとなり得ることが予測され、患者に最も適した治療法を特定する上で重要な手段となることが期待される。























