化粧品メーカーのウテナは2023年11月3日、高知県北川村立北川中学校の3年生(6人)と一緒に、同村特産品「ゆず」のPRイベントを行った。場所は全国各地の特産品が集まる交通会館マルシェ(東京・有楽町)。中学生考案の「北川村クイズ」に答えた来場者に、ウテナと中学生が共同開発した「ユトワ ハンドクリーム」(40グラム・657円)をプレゼントした。

高知県東部にある北川村は、日本有数のゆずの産地である。程よいまろやかな酸味で皮もふっくらしており、繊細な風味への支持は厚い。だが、同村の人口減少は進んでおり、23年9月時点で1207人しか住んでいない。ゆず農家の高齢化、後継者問題は深刻化しており、江戸時代から続くゆず産業の継続は喫緊の課題になっている。

ウテナは地域創生の一環として、北川村で廃棄されていた「ゆずの種」からオイルを抽出し、「ゆず油シリーズ(ヘアオイルとオイルミスト)」に配合。さらに北川中学校3年生と商品を共同開発し、ウエルシアグループ(ウエルシア薬局とよどやドラッグ)で販売する取り組みも行っている。共同開発の第一弾は22年発売の「ユトワ 洗顔石けん」で、同年11月5日に高知県のアンテナショップ「まるごと高知」(東京・銀座)でPRイベントを実施。第二弾の今年はハンドクリームを開発し、再び東京でPRイベントに挑んだ。

23年のPRイベントには200人以上が来場し、大いに盛り上がった

「村のことを知り、ふるさとへの愛着と誇りを育むことを目的に地域資源を題材とした探究的な総合学習を行う『北川学』を小学生の頃から受けている中学生たちは、共同開発した化粧品だけでなく、村の物産品も一緒に多くの方々に知っていただきたいと自ら考え、ユトワ ハンドクリーム、ゆずぽん酢、ゆずサイダーなどを紹介し、販売するPRイベントを交通会館マルシェで開いたんです」(ウテナ総務部広報室の則包裕美さん)

22年発売の洗顔せっけんは、高知県のよどやドラッグでは完売。何度も他県のウエルシア薬局から在庫を運んだという。「他の商品よりも、お客さまからの問い合わせが多く、SDGsへの関心が高まっていることがうかがえます」(則包さん)。今回のハンドクリームは、23年11月1日の発売から2日間で120個以上も売れた。ウエルシア薬局の桐澤英明代表取締役副社長(商品本部長)は「上々の滑り出し」と話し、次のように続けた。

「ハンドクリームはテクスチャーが良く、お客さまが手を伸ばしやすい商材だと思う。地域に眠る魅力的な商品を取り上げ、全国に広げるのは企業の社会的責任の一つであり、今後も続けていく。北川村のゆず産業を支援する取り組みの意義と目的を全国の従業員に伝え、お店が世の中に役立っているという意識が浸透すれば、店頭プロモーションが活発になると期待している」

ウテナの新卒採用面接では、北川村との取り組みを話題にする学生が増えているという。北川村の中学生、ウテナ、ウエルシアグループのコラボレーションは、多様な成果を生み始めている。

月刊『国際商業』2024年01月号掲載