2026.01.27

開催レポート「1969年から北欧家具を紹介するアクタスが、デンマーク家具と名作『Yチェア』の魅力を考察」

ACTUS
ウェグナーとモーエンセンが牽引した黄金期、アクタスとウェグナーの特別な繋がりに光を当てる

インテリア販売を行う株式会社アクタス(東京都新宿区|代表取締役社長:村田 謙)は、時代を超えて愛されるデンマーク家具の魅力を深く掘り下げる特別トークイベント「Danish Modern Design」を、2026年1月10日(土)にアクタス・新宿店で開催しました。



1969年の創業以来、北欧家具を日本に紹介してきたアクタスは、昨年10月にアクタス・新宿店2階をリニューアルしました。北欧ブランドの品揃えを拡充し、北欧家具の魅力をより一層感じられる空間とへとアップデート。リニューアルを記念した本イベントでは、カール・ハンセン&サンの郡司圭氏を招き、名作家具の背景にあるストーリーや、時代を超えて愛される理由について詳しく解説されて、多くの参加者が熱心に耳を傾ける内容となりました。
【イベント開催概要】
名称: デンマークデザインとハンス J. ウェグナーを知る特別トークイベント「Danish Modern Design」
日時: 2026年1月10日(土)
会場: アクタス・新宿店(東京都新宿区新宿2-19-1BYGS新宿ビル)
    https://online.actus-interior.com/shop/shinjuku/
登壇者:郡司 圭氏(カール・ハンセン&サン トレーナー)/野口 礼(アクタス家具バイヤー)

イベントハイライト(1) 名作が生まれるまでの歴史と知られざるエピソード

イベントは1月10日(土)に午前と午後の2回に分けて開催しました。午前の部では、カール・ハンセン&サンの郡司氏とアクタスの家具バイヤー野口礼による対談形式で、午後の部では郡司氏がデンマークのモダン家具の歴史や著名なデザイナーたちのエピソードを紹介しました。

会場となったアクタス・新宿店2階「DANISH MODERN」スペース

■ウェグナーとモーエンセンによる‟暗黙の了解”が生んだ黄金期
郡司氏からは、まず資源に乏しい小国デンマークが国策としてモダン家具デザインを発展させてきた歴史的背景が紹介されました。モダン家具の歴史は、‟デンマーク近代家具の父”と呼ばれるコーア・クリントが提唱した「リ・デザイン」という方法論から始まります。これは、過去の優れた様式を研究し、現代に合わせて改良していく手法です。
そして、郡司氏の‟推し”であるハンス J. ウェグナーの「チャイナチェア」から始まる興味深い仮説が展開されました。1940年代初頭、ウェグナーは中国「明」時代の椅子をリ・デザインしたチャイナチェアを発表しました。その後、約10種類近くのリ・デザインを経て、1949年にデザインされたのが「Yチェア(CH24)」です。
なぜ、ウェグナーが中国の椅子に目を向けたのか。そこには親友でありライバルでもあったボーエ・モーエンセンとの‟暗黙の了解”があったと郡司氏は考えます。

郡司氏(左)と野口による対談形式で開催

当時、モーエンセンは師であるクリントの流れを汲み、アメリカのシェーカー教徒の椅子をリ・デザインした「J39」などの開発に着手していました。「FDB(デンマーク生活協同組合連合会)」家具部門の責任者として、「堅牢で、美しく、機能的で手頃な価格の庶民のための家具」という民主的なデザインを追求し、成功していたのです。
ウェグナーは、モーエンセンが手がける領域を尊重し、あえて別のルーツである中国の椅子を選び、自身の造形美を深めていったと郡司氏は考えています。シェーカー家具のリ・デザインであるモーエンセンの「J39」が‟国民の椅子”として普及していった一方で、ウェグナーは明朝家具のリ・デザインを経て「Yチェア(CH24)」で世界的な評価を確立しました。親友であり最大のライバルでもあった2人は異なる様式へのリ・デザインのアプローチで、デンマーク家具の黄金時代を築き上げたのです。
郡司氏は「二人が異なる探求を通じて競演し、相互に高め合ったことが、デンマーク家具の揺るぎない地位を確立した背景にある」と話します。

「J39」Fredericia

「CH24」CARL HANSEN&SON

アクタスとウェグナーによる、超レア「ジャパンチェア」の物語
アクタスの家具バイヤー野口からは、アクタスとウェグナーの特別なつながりについてのエピソードが紹介されました。
アクタスがホテルや公共施設のインテリアを請け負うコントラクト事業を始めた最初のプロジェクトが、1982年開館のMOA美術館(静岡県熱海市)への家具納入でした。超一流の収蔵品を誇る美術館にふさわしい椅子の調達を託されたアクタスコントラクトチームはデンマークへ渡り、北欧最大のコンベンションセンターで現地の有名家具メーカーを集めて、本プロジェクトの説明会を開催。「美しく、上質で、長く愛される家具が、この日本の新しくできる美術館には必要なのだ」という熱意を家具メーカーにプレゼンしたところ、その様子が現地新聞で大きく報じられました。驚くべきことに、 ウェグナー本人がこれを目にし、「ぜひ自分に作らせてほしい」とアクタスに直接連絡が入ったのです。
こうして、ウェグナーがデザインし、PPモブラーで製造された「ジャパンチェア」が誕生しました。ジャパンチェアはMOA美術館のVIPルームに80脚が納められた非売品の特別仕様で、一般の目に触れる機会は少ないものの、ウェグナーの超レア作品として今も日本に存在し続けています。

ジャパンチェアが今も使われているMOA美術館のVIPルーム

イベントハイライト(2) 成績優秀ながら35歳まで経済的な成功を手にできなかったウェグナー

イベント午後の部では、郡司氏による「ウェグナーとカール・ハンセン&サンの歴史」を開催。今や巨匠デザイナーとして知られるハンス J. ウェグナーの知られざる足跡が紹介されました。

熱っぽく語る郡司氏

1914年に生まれて2007年に92歳で亡くなるまで、ウェグナーは500脚ほどの椅子をデザインしました。単に図面を描くだけでなく、プロトタイプなどの実物モデルを自作できる稀有なデザイナーでした。これは、当時のデザイナーがまず職人としてマイスター資格を取得してからデザインを学ぶのが一般的であったためです。ウェグナーも17歳頃に木工マイスターの資格を取得。郡司氏によると、デンマークのマイスター試験は製図や製作に加え、工房経営に必要な簿記なども含まれ、ウェグナーは最優秀の成績で卒業しています。
しかし、親友でライバルでもあるボーエ・モーエンセンが「FDB(生活協同組合)」の家具部門トップとして、市民向けの安価な家具を次々と世に出しエリートコースを歩む一方で、ウェグナーは苦しい経済状況が続きました。美しい椅子をデザインしながらも、当時は高級ラインしか手がけていなかったため、経済的な成功には至っていませんでした。
■Yチェア誕生の裏側。「3週間の伝説」と約10年の研究
そうして迎えた1949年。ウェグナーはデンマークで1908年に創業された家具メーカーで、最新の機械設備を持つカール・ハンセン&サンと出会いました。機械を使いこなせる外部デザイナーを探していた同社とウェグナーの出会いは奇跡的といえ、ウェグナーはこの出会いからわずか3週間のうちに、「Yチェア(CH24)」を含む6つの製品をデザイン。以来80年近く、Yチェア(CH24)は一度も途切れることなく生産され続けています。
ウェグナーは、たった3週間でYチェア(CH24)をデザインしましたが、これは決して一時の思いつきではありません。ウェグナーは1940年代初頭から、中国の明時代の椅子をルーツにした「チャイナチェア」のリ・デザインに取り組んでいました。その図面の端には、メモ書きとしてYチェア(CH24)に似たデザインが既に残されています。さまざまなメーカーを想定したデザインの試行錯誤を経て、カール・ハンセン&サンの持つ機械加工技術に最適化させた形が、Yチェア(CH24)なのです。
郡司氏は「ウェグナーは明式家具のリ・デザインを追求するなかで、背もたれやアームの形状が人間の体をどう支えるべきか、そして機械でどこまで美しく加工できるかという限界を、10年近くかけて見極めていたのでしょう」と話します。

デザインされてから2026年で77年目を迎えるYチェア

Yチェア人気の背景に、安藤忠雄氏の功績あり
デンマーク家具が長くポピュラーであり続ける理由について、郡司氏は装飾性を排した機能的な構造に削ぎ落していく造形美学による「飽きのこないデザイン」を挙げます。さらに、建築家の安藤忠雄氏が1976年に発表したコンクリート打ち放しの住宅「住吉の長屋」でYチェア(CH24)が使われたことで、それまでの「ほっこりした北欧」というイメージを一新し、日本人が持つ「削ぎ落とされた美」の感性とデンマーク家具の「有機的で機能的な美」が共鳴したことが、現在の揺るぎない地位を築いたと話します。
ちなみに安藤氏は、自身の建築設計事務所を設立する際、Yチェア(CH24)を4脚購入しているそうです。また、ウェグナー生誕100周年の際には、安藤氏とのコラボレーションで制作された「ドリームチェア」は、とカール・ハンセン&サンが最も不得意としていた3D成形合板技術に挑戦したもので、常に新しいことに挑戦し続けたウェグナーへのオマージュだったと郡司氏は解説します。
【アクタスからのコメント】






アクタス・新宿店2階「DANISH MODERN」スペース




アクタスは、店頭での接客や商品ディスプレイだけでは伝えきれない家具の文化的・歴史的な背景を伝えるため、このようなイベントを定期的に開催しています。
1969年の創業以来、半世紀以上にわたり北欧家具の輸入・販売に携わってきた経験を活かし、単なる販売にとどまらず、文化や哲学を共有することで、お客様との関係を「一時的な取引」ではなく「長期的なパートナーシップ」へと深めることを目指しています。

※次回は、4月に別テーマで開催を予定しています。
ACTUS【株式会社アクタス】



「豊かなくらしとはただ消費を繰り返すことではなく、作り手の顔が見える製品とできる限り長い時間を過ごすこと」創業メンバーが残したこの言葉を現在にも受け継ぎ、1969年の創業以来、欧州のモダンインテリアを日本のマーケットに広めてきました。
アクタスはライフスタイルストアという独自の立ち位置をとり、“丁寧なくらし”というテーマのもと、永く使い続けることのできる良質なデザインのヨーロッパの家具、オリジナル家具、インテリア小物、アパレル、グリーンの提供までライフスタイル全般をサポートします。また、環境負荷を最小限に抑えたサステナブルなサプライチェーンを運営し、独自のサーキュラーエコノミーの推進にも取り組んでいます。
会社名:株式会社アクタス
代表者:代表取締役社長 村田 謙
事業内容:オリジナル家具・雑貨の開発と小売、卸売、レストラン・カフェ、アパレル事業、公共施設、商業業施設等のインテリアデザイン・設計施工など
公式HP URL https://www.actus-interior.com/
公式オンラインショップ https://online.actus-interior.com
Instagram https://www.instagram.com/actus_press
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