サイキンソーは、「細菌叢(さいきんそう)で人々を健康に」を企業理念に掲げ、腸内フローラをはじめとする常在細菌叢と心身の健康・疾患リスクとの関連を解明し、全ての人々の日常に個別最適な解を提供することで、誰もが自然と健康になれる社会を目指している。その一環として、腸内環境の状態を把握することが健康維持・増進につながるとの考えから、自宅で手軽にできる腸内フローラ検査「マイキンソー(Mykinso)」を開発した。日本人の大規模な菌叢データベースと高度なデータサイエンス技術を活用し、検査サービスの拡張やOEM開発、システム構築支援、匿名加工情報の研究利活用推進など、菌叢データに基づく事業を多角的に展開している。また、アスリートやスポーツチームに向けた、腸活起点のコンディショニング支援を行っている。本活動の一環として、2024年より日本体育大学 陸上競技部 駅伝ブロックに第101回箱根駅伝でのシード権獲得に向けた伴走支援を行った。
支援当初のチームの目標は、第101回箱根駅伝(25年開催大会)にて、総合10位以内に入賞し、7年ぶりのシード権を獲得することだった。コーチ陣や選手たちには、目標達成に向けて腸内環境を整えてパフォーマンス向上を図ることに関心をもってもらい、約1年間の伴走支援がスタートした。
駅伝ブロックの学生は全員が寮生活を行っており、管理栄養士による徹底した食事管理が行われていた。とはいえ、限られた予算の中で提供される寮の食事のみでは、完全にコンディションをサポートすることは難しい状況だった。特に夏場の長期合宿では筋肉疲労や全身疲労を感じる選手が多く、年始の箱根駅伝本番前には疲労骨折などで離脱する選手が出るなどコンディションの課題を抱えていた。
そこで、腸内フローラ検査を基にした腸活で選手のコンディショニング支援を行った。検査は、24年3月~12月にかけて計4回実施し、サイキンソーの管理栄養士による結果解説セミナーや検査後の個別アドバイスなど、10カ月間にわたり選手のコンディショニングに伴走した。
計4回の腸内フローラ検査とセミナーを経て、選手は約1年間の腸活を実践した。結果、チーム全体として整腸効果のあるビフィズス菌やスーパー善玉菌と呼ばれ、健康への作用が期待される酪酸産生菌の割合が増えるなど、腸内環境が良好に変化した。
主将を中心に箱根駅伝の主力となる4年生や3年生が率先して腸活を実施する中で、腸活実践後の体感の変化などを選手間でシェアする動きが広がり、検査を受けていない選手も腸活を行うようになった。結果として、チーム全体のコンディショニング意識が向上する波及効果が生まれ、例年箱根駅伝の本番前は疲労骨折などで主力選手の離脱などが起こっていたものの、今年は主力選手が一人も欠けることなく本番を迎えることができた。目標に掲げていた「総合10位以内の入賞」と「シード権の獲得」を達成することはできなかったものの、昨年の総合14位と比べ順位を二つ上げた総合12位となり、多くの選手が学内新記録や自己新記録を出すなどの大健闘につながった。

2025年箱根駅伝にて、襷が渡る様子
■日本体育大学 陸上競技部 駅伝ブロック 玉城良二監督のコメント
「今回の検査はチーム全員が受けたわけではなかったのですが、検査を受けた学生を筆頭に、腸活で学んだ知識をチームに共有して他の学生がそれを見て学ぶ、良いサイクルができたと思います。今年の箱根駅伝では、目標にしていたシード権の獲得には至りませんでしたが、昨年の総合14位から総合12位まで順位が上がり、シードもあと一歩のところまで見えてきました。もちろん腸活だけが要因ではないですが、やってみて無駄だったことはないんじゃないでしょうか。きっと腸活も、今回の箱根の結果につながった一つの要因にはなったのではないかと思います」

練習中、選手を指導する玉城監督
■駅伝サポートスタッフ 小野木俊コーチ、渡邊香緒里先生、谷口耕輔先生のコメント
「昨年の箱根前は、本番が近づくにつれて疲労骨折や体の痛みが出てくるメンバーが多かったです。体調面が万全じゃない選手が出てくると、メンバーを入れ替える必要があるのですが、今年はそれがなく本番の箱根までベストメンバーで臨むことができました。ここ数年で一番、箱根でちゃんと戦えたのではないかと思います。腸活はきっとその一因になってくれたと思います。また、学生同士でコンディションへの意識がしっかり波及していく様子も感じられました。主将を中心に腸活を頑張った子たちが腸活を実践して体感が良くなり、周囲に共有して実践する子が増える良いサイクルにつながり、選手たちの自主性と成長を実感しました」

左から小野木 俊コーチ、渡邊 香緒里先生、谷口 耕輔先生
■日本体育大学 陸上競技部 駅伝ブロック 24年度主将 分須尊紀選手のコメント
「腸活を始める前は、下痢と内臓疲労の二つに悩んでいました。元々お腹が弱く下痢になりやすい体質だったこともあり、強度が高い練習の後にひどくなる実感がありました。体力を回復させるためにしっかり食べなくてはいけないのに、内臓疲労で食事が喉を通らないことも多かったです。大学の授業でも脳腸相関について習ったことがあり、腸の大切さは知っていたので、腸活をすればもっとコンディションが良くなるはずだと直感的に思っていました。自分はもちろん、同じように悩んでいるチームメイトにも役立つはずだと思い、セミナーなどで教えていただいたことを率先して実施しました。腸活を始めてから、少しずつ下痢症状や内臓疲労が減っていきました。チームメイトにも体感の変化を伝えると寮の食事後にみんなヨーグルトを食べていたり、ヨーグルトの上にハチミツをかけていたり、腸活を意識しているようでした。箱根の本番前には、多くの選手が自己ベストの記録を出せるようになっていましたし、腸活のおかげでチーム全体も大きく進化できたのではないかと思います」

2025年箱根駅伝8区を走る分須選手