ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担う、ポーラ化成工業は6月18日、赤色光は好中球を皮膚に集めにくく、近赤外線は好中球を集めやすくする可能性があることを見出したと発表した。好中球が分泌する好中球エラスターゼは、シワの原因となることから、日常生活で赤色光を肌に届けつつ近赤外線はカットすることで、効果的なエイジングケアが期待できるという。
ポーラ化成工業は、シワの形成に免疫細胞の一種「好中球」が関与していることを、すでに発見している(図1参照)。好中球は普段、血管内を流れているが、紫外線などの刺激により真皮に炎症が生じると、真皮に移動し好中球エラスターゼという分解酵素を放出する。これによりコラーゲンやエラスチンなどの真皮を構成する成分が分解され、シワが形成されると考えられているという。
一方、さまざまな種類の光が皮膚に与える影響についても研究が進んでいる(図2参照)。例えば皮下組織には、皮膚を支えたるみを防ぐ皮膚支持帯(RC)とい う線維構造があるが、赤色の光はRCに良い影響を、近赤外線は悪い影響を与えることを見出している。今回、赤色光や近赤外線はシワの形成にも影響を与えるのではないかと考え、好中球との関連についての研究に着手した。
好中球が血管外に移動するときは、まず血管内壁の表面に出ている接着因子を足掛かりとして血管の壁に接着し、その後、血管の壁をすり抜けていく。したがって皮膚内に好中球を増やさないためには、接着因子の量を抑えることが有効だと考えられる。そこで血管内皮細胞を培養し光の影響について検討した結果、赤色光が接着因子の発現を減少させることを発見。また、近赤外線が逆の作用を持つことも見出した(図3参照)。
今回の研究から、肌に赤色光を届けながら紫外線や近赤外線をカットすることで、シワの原因となる好中球を皮膚に集めにくくできるとの考えに至った。好中球エラスターゼを阻害するニールワンと組み合わせると、好中球の働きを多面的に抑制できるため、肌のエイジングケアの効果をより高められることが期待できるのだという。